『のんではいけない薬』という本がある。
この本ではSSRI(特にパキシル)や睡眠薬(特にトリアゾラムやフルニトラゼパム)を危険として服用することのデメリットをこんこんと書き連ねている。
買ってはいけない、食べてはいけない、飲んではいけないといった「いけない本」にはいかにも根拠を持ったような説明がされていて、あたかもそれらが不要、さらには悪であるという論調だ。
薬は何らかの作用を有することで、服用する人が解決したい問題を助けるものである。副作用ばかりにとらわれて、そもそもの「作用」の功績を無視するのはいかがなものかと思う。
僕自身はSSRIによって確かに救われている。SSRIによって自殺を思いとどめたし、飲み続けることで明らかに体調が良くなっている。薬への依存や断薬時の禁断症状をあげて、「だからこの薬は悪いのだ」というのはいささか単調な主張だ。仮に一生薬を飲み続けることになっても、自殺をまともに考えるくらいの状態よりも何とか明るくやっていこうと思えるほうがよっぽどQOLが良いのだと自信を持って言える。
SSRIの副作用が危険だから三環系坑うつ薬が良いのかというと、坑コリン作用による副作用は後者のほうが強いと言われている。その苦しみでコンプライアンスが低下し、結果として原疾患が悪化したのでは患者にとってはありがたい話、ということにはならない。
安易に薬を処方する医師も医師だが、安易に薬の危険性をあげて不安をあおるのは命にかかわるだけに迷惑だし危険だ。「のんではいけない」といわれた薬を飲んで生活の質が改善した、寿命が延びた、完治した、という人がいるはずだ。ある症状に対してある薬を投与すると100人救われ、10人副作用で苦しむ。その薬を使うか使わないかを決めるのは医師で、飲むか飲まないかを決めるのは本人である。副作用のリスクを恐れて服薬しなければ、副作用は発生しない。その代わり薬によって助かったかもしれない可能性も放棄することになる。
もっとも僕は薬の服用に対してまったく抵抗はなく、「必要な薬ならいくらでも飲み続ければよい」という考え方で、不必要な薬を極力飲まないためにも、必要な薬はきっちり飲むスタンスなので、この手の情報を信じる人はご自由に、という感じだ。あなたを直接診察している医師よりも、本に載っている情報を信じるというのなら、それはそれで個人の自由だし、選択なのだから。