地震の夜 | ポークビッツ博士のB級映画探索隊

地震の夜



こんなに長くアメブロを離れているにもかかわらず、
数々の暖かいメッセージやコメントを頂きました。

年のせいか涙腺も膀胱も緩くなっているので、思わずどちらかが漏れてしまいそうです。

避難所で不安を紛らわすために書いたものなんで、公開するつもりはなかったんですが
安否を気にして下さった方にお礼の意味を込めアップいたします。




大きな地震は二回だった。

最初の地震の後は、誰もがまだ気持ちに余裕があったように思う。

ライフラインもなんとか保てていたし、日中は営業しているお店もあった。

しかし次に襲ってきた本震にはさすがに参った。

真夜中に突如、家中の携帯がけたたましい音をたてて鳴り始めたかと思うと
どーんという音と共に、間髪入れずに前日をしのぐ大きな揺れ。
とっさに子供を抱え立ち上がろうとしたが無理だった。

大きな箱の中に入れられ振り回されてるような状態では、
人間は何もできないことを悟った瞬間、明かりが消えた。

私たちは暗闇の中ただひたすら待った。

時間にして二、三分だったと思う。

私は家の下敷きになることを覚悟したが、幸いにしてそれはなかった。

ようやく揺れが弱まり外へ出てみると、近所の誰もが車に乗り込み
大慌てでイグニションを回している。

聞けば津波警報が出たのだとか。

私たちの住んでいる場所は、大きな川に沿った地形で海にも近く
おまけに高い建物もすぐに歩いて行ける距離にはない。


お隣さんは山手へと避難するというので、
後日の再会を誓い、私たち一家も山手へ向かうことにした。

しかし山手へ避難する車の群れは気持ちの焦りとは裏腹にいっこうに進まず、
ついに私たちは車中で津波到達時刻をむかえた。

幸いにして津波がここまで押し寄せる事はなかったが、
高台まで距離があるこんな田舎では誰もが車で避難するしかなかった。

避難に車を使うなとネットやらで言ってる人たちは、津波警報直後のわずかな時間内で、
子供を抱えて数キロ先の安全な場所まで余裕でたどり着くという
人間離れした運動能力を持ってるに違いない。

そんな人間離れした能力をもっているであろうスーパーマンの君たち
君らの持つそのスーパーパワーを是非この被災地で使ってくれ。

そんなことを考えながら私は渋滞の続く車列を離れ、もと来た道へと車を滑り込ませた。

そして一旦避難所に家族を置き、私だけが毛布と身の回りの物を集めるために家に戻った。

こういう時、明かりのない家の中では、ライト代わりの携帯が役に立つ。

そう、私の携帯も大活躍してくれた。漫画本の角にちょっと当たったがなんてことない。

この灯りがなければ真っ暗な家の中を這いずり回ることは不可能だったろう。



とりあえずみんな無事、そんな当たり前のことが何よりも有り難いと思った。


ついでにiPhoneのガラスは、もう少し硬くてもいいのではないかとも思った。