研修医時代を共にした仲間から久しぶりの電話がありました。

別々の大学を卒業し、
偶然にも同じ研修施設で口腔外科を2年間経験し、
私は一般開業医へ、
彼は口腔外科の大学院へ、
対照的な進路を選んだ間柄。

3月末に別れて以来なので1ヶ月半ぶり。
元気で過ごしているようでしたが、
やはり研修医時代の方が楽しかったと言っていました。

研修医時代は一番近くにいた相手だと思います。
たった1ヶ月半でもとても懐かしい声でした。
携帯電話を通した声をあんなに嬉しく思ったのは初めてかもしれません。

研修が終わって、まだ1ヶ月半。
新たな環境に多少慣れたとは言っても、
2年間慣れ親しんだ環境と比べるとまだまだです。

同じ場所で歯科医師としてのスタートを切った同士、
選んだ進路は別々になりましたが、
遠い場所で頑張っている仲間がいる事を再認識でき、
明日からも頑張ろうと思うことができました。

今の私の環境では、大きく変わることを強いられますが、
この2年間で得た大事な事は変わらずに胸の中で持ち続けます。
それではなぜ歯科医師を目指したのか?
それについてお話ししようと思います。

時は私が高校3年生、いや、浪人生の頃にさかのぼります。

ま、みなさんきっと予想できていると思いますが
当時私は医学部を目指しておりました。
そう、お医者さんになりたかったのです。

そこまで分かればみなまで言う必要もないでしょう。
医学部への学力に到達しなかったので、
前期試験で医学部に受かる確率はそんなに高くない・・・
後期試験で医学部に受かる程小論文・面接は得意ではない・・・
2浪は厳しい・・・・さて合格の可能性が高いのはどこか・・・。
と考えた訳です。

当時は私は物理が得意で、これをもっと勉強するのも悪くないなと思っていました。
そこで浪人時代の私は親に相談します。
「物理学科か・・・理学部は・・・就職探すのが大変だからお勧めはできんなぁ」

じゃあ、薬学部にしようかな

「MRさんは営業が大変だ。お前は営業は向いていないだろう。
 お医者さんになりたいんなら、歯医者があるじゃないか。
 先生と呼ばれる仕事の方がいいと思うよ。」

そうかなぁ・・・・お医者になれないから歯医者というのもなんだか違う気がするが。。。
小さい頃から歯医者に行くのはとても嫌だったけど、
歯医者でみる機材とかは興味を惹かれたなぁ。。。
大学に行くだけで(それもそもそも大間違いでしたが)資格が取得できるのはオイシイかもしれない。

そう考えて前期医学部、後期歯学部に願書を提出しました。今考えると愚の骨頂です。

自分の人生最大の失敗と言っても過言ではありません。

前期医学部も真剣に臨みましたが、、、見事撃沈。あの時は生まれて初めて悔し涙をしたものです。。。

後期歯学部にはなんとか合格することができました。
これで受験勉強から開放される。良かった。

・・・・そんな風には驚くほど思えなかったのです。
  コンビニの数より多い歯科医院

  ワーキングプアに陥っている歯科医師

  歯科医師国家試験の難化

  歯学部の定員割れ



今、歯科を取り巻く環境は確実に厳しいものとなっています。
え、歯医者って儲かるんじゃないの?
そんな印象を未だに持っている人はごく少数派でしょう。
もしそんな人がいるとすれば、それは過去の話です。

いやいやそうは言っても 国家資格
それなりにはもらえるんじゃないの~?

確かに私もそう思っていました。
歯学部に入学し、最初のオリエンテーションで

 「この歯科医師過剰時代、この道を選んだ君たちは
  大変な苦労をする事になります。」

と学部長のありがたいお話を聞いても、

「いやいやそうは言っても。」

と甘い考えを抱いていました。


そして8年の時が過ぎ・・・・


現在歯科医師3年目。
ワーキングプアまっただ中です。

私は研修医は恵まれた環境で過ごしたので、
その反動もあり現在の収入は研修医時代の半額。
独り暮らしするにはギリギリなので
親に申し訳ないと思いながらの実家暮らしに逆戻りです。


もちろん開業医で儲けている先生も確かにいらっしゃいます。
ただ、それは 「成功している」 先生のみです。

「歯科医師」=「高収入」
それは遠い過去の話。
高収入を得るには
「成功した歯科医師」
になるほかありません。

そのためには大変な努力が必要です。
国家試験の合格率が70%を切ろうとしており、
資格を取る為の勉強も大変な上に、
この資格で食べて行くにはさらに厳しく勉強をしていく必要があるのです。


 歯科医師は、歯科医療及び保健指導を掌ることによつて、
 公衆衛生の向上及び増進に寄与し、
 もつて国民の健康な生活を確保するものとする。
                             (歯科医師法第1章 第1条)

この職務を全うするために行う努力は
ごく自然に必要なものでありましょう。
その事になんら疑問もありません。

ただ、現在自分の置かれている環境を身をもって実感するにつけ、
安易な気持ちでこの職業を選択したことに後悔の念を免れません。


まだまだ歯科医師としては未熟な私ですが
フレッシュな視点で?歯科医師の色々を綴って行こうと思っています。