みのり苑

お香界隈(そんなんあるのか)では言わずと知れた、天然香料を駆使した実直なお香作りに定評のある滋賀の名店でごさいます。

老人ホームでなければデイサービスでもございません。


みのり苑といえばなんといっても風韻シリーズが有名ですよね。ですよねって言ってもお香界隈以外の人にはなんのこっちゃだと思いますが、堀川とか二条とか、はんなり京都的な香りは一通り楽しんだので、もっと天然香木由来の硬派なお香を焚いてみたい!という人がたどり着く銘柄がみのり苑謹製の風韻シリーズです。


で、今回紹介するのはみのり苑の『法心』


風韻白檀でも沈香でもなく、公式サイトにも名前すら載ってない法心。


法多山に遊びに行ったとき、お土産屋さんに置いてあったのを見つけて、目を輝かせました。

金ピカゴージャスなパッケージ(昔叶姉妹がCMしてたGBAのゴールドカラーを思い出します)にひっそり小さくみのり苑の文字。

お宝発見って、小躍りしましたよ。

萎びた土産屋でぎらぎら光ってる線香を前に興奮してる自分に友達は引いてましたけど。

我ながら歳不相応なじじむさい趣味だと思います。でもパチンコとか酒に溺れるよりマシでしょ…?コスパいいし。


箱開けてびっくりしました。

可愛いマッチ棒サイズのお線香が箱いっぱいにうまってるんですもの。赤ちゃんみたいだ。


香りは割と珍しい白檀+漢薬の香り。

白檀も甘ーい感じの、いかにも高品質な白檀使ってまっせ!!といった具合ではなく、少し苦味のある香ばしいテイストの白檀です。

確か値段も風韻シリーズと比べてかなりお手頃だったはずなので、さもありなん。

でも価格が低い=粗悪品では決してないのです。

練乳たっぷりの甘いクリームじゃなくて、ビターチョコレートの気分だってあるでしょ。それと同じです。

そんな素朴でビターな白檀を各種漢薬が香りにまろやかさと辛味を与えてくれます。

theお寺の香り。

うーん。硬派。


では火をつけてみましょう。


熱が加わることによって漢薬の香りがよりまろやかになり、素朴でやや苦み走った白檀の香ばしさが一段と際立ちます。

上匂いほど寺感は薄まり、薪が燃えるような香りのニュアンスが加わってマイナスイオンたっぷりの森の中でキャンプしてるお坊さんが見えてきました。

確かに寺感がある硬派な香りなのですが、香りだちがすっきり穏やかなので座敷香としても十分使用に耐えうるかと。


香りのイメージとして一貫してるのは素朴さ。

同社の風韻白檀と焚き比べると、この法心が持つ白檀の素朴さというのがよく分かると思います。

風韻白檀の方は最高級の白檀のみを使用した香りで、漢薬は入っておらず、老山白檀の甘くて華やかなおもてなしの香りがします。

一方、法心の白檀は素朴でビター、薪を思わせる香ばしさがあり、こちらは日常の生活に寄り添ってくれるような安心感を覚えます。


同じ原料を使用していても全く香りが違うのがお線香の面白いところですね。

そして値段やグレードの良し悪しでは計れない価値を見出していくのも楽しみの一つだと思います。


※Amazonで検索かけたんですけど見つかりませんでした。僕が持ってる線香の中では玉初堂の法円、朱雀、松栄堂の五山なんかが似た系統の香りかなあと思います。法心ほどの素朴さはありませんが。