百人一首かるた指導入門書   
 ~和歌にみる美しい日本の心


第二章 『百人一首』解釈と鑑賞  23


28 源宗于朝臣(みなもとのむねゆきあそん)
 (生年不明~九三九年)


山里は冬ぞさびしさまさりける
  人めも草もかれぬと思へば

  (古今集)


(歌の詠み方)

上の句 やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける

下の句 ひとめもくさも かれぬとおもえば


《歌意》

 山里はことに冬になると寂しさがまさって感じてしまう。訪ねて来る人もなくなり、草も枯れてしまったことを思えば。


歌の間のエピソード

 歌の背景

*この歌は、山の中で一人で住んでいるのに訪ねてくれる人もいない寂しさを歌っているのです。この歌を作った時、宗于は仕事の第一線を退いて山に籠もって住んでいたのではないかと想像できます。百人一首では、はっきりとした冬の歌はこの歌を入れて四首選ばれています。他の歌は第四番「田子の浦」第六番「かささぎの」第三十一番「朝ぼらけ有明の」の三首のみです。


 語の説明

*「山里は」とは、係助詞「は」は他と区別する意味があります。都ではなく山の里という意味になります。
 「冬ぞ」の「ぞ」は強意の係助詞で「季節の中で冬がもっとも」というような意味です。
 ここでいうところの「寂しさ」は、「孤独で寂しい」ということを表しています。

*「ひとめ」は、「人の目」ということで誰も訪ねて来なくなったことを表しています。

*「かれぬ(漢字では「離れぬ」と書きます)」という言葉には「はなれる」と「草が枯れる」と いう二つの意味を重ねてあります。このような言葉を「掛詞」と前に言いましたね。


 人物

*源宗于は、光孝天皇の孫にあたります。
 和歌に優れていて、三十六歌仙の一人です。
『大和物語』には、この宗于のお話が「右京大夫」の名でたくさん載っています。
 そのお話は、皇孫であるにもかかわらず不遇を嘆いていることが中心となっています。
 源宗于は、紀貫之ともとても仲が良かったということです。


かるた一口メモ

 この札は、「やまざとは」の「やまざ」と詠んだら取れる三字決まりの札です。
 「やま」で始まる歌は二枚あります。
 もう一枚は「山がわに」という歌です。
 取り札の中に「なかれもあへぬもみちなりけり」がありますか。
 それが「山がわに」です。
 こんど、「山」と詠んだら、その札を取って下さい。



(源宗于朝臣  了)