一応、型稽古もやったのですが「平安其の二」だけで終わってしまいました。これは前回のブログでも「ちょっと通常のものと違っている部分があります」と書きました。なぜ? そうなったのか詳しくは聞いていなかったので、ちょうど良い機会だと思い総師範に尋ねてみました。
M: この型(平安其の二)ですが、どうして伝承だけ「あの部分」が違うのですか? 調べてみましたが、剛柔流でも普通に「鉄 槌」でした。
W: 最初は「鉄槌」だったし、大山先生も「鉄槌」をしていた。
M: それが何で今の形になったのですか? 先生が独自に作り変えたのか? それとも大山先生が変えたのか?
W: きっかけを与えてくれたのは安田先輩だ。安田先輩の前でこの型をやっているときに、「それじゃ、体重が乗らないだろ。そ んなので相手を倒せると思うか?」と言われた。
M: それで先生は今の形で踏み込んだ?
W: いや、最初は普通に「追突き」をやったが、「それではまだ足りない。もっと強く踏み込め!」と言われたので、腰を思いっ きり切って、身体を回しながら突いてみた。そうしたら安田先輩は「そうだ。それくらい身体を廻して体重を乗せろ!」って 褒めてくれたよ。
M: それから変わったのですね?
W: いや、しばらくは自分で稽古するときだけそうして、普段は通常通りの型をやっていた。ある時、大山先生の前でやったとき に無意識の内に安田先輩から教わったやり方でやってしまった。「やってしまった!」と思って、体中から冷や汗が噴出して しまったよ。どんなにどやされるかと心配したが、予想に反し「それは何だ? どういうことだ?」と聞かれたので、安田先 輩とのやり取りを話して、踏み込みの練習のために自分の稽古のときはやっていると説明した。
大山先生は決して怒る事なく、「そうか、その踏み込みはいいぞ」と私の型稽古を認めてくれた。本当に懐の深い人だと実感したよ。
渡邊総師範による師・大山倍達先生のエピソードでした。