今回はいよいよMOSFETによるハーフブリッジ設計をしてみようと思います。

 

ハーブリッジについては前回の記事でまとめてあります。是非ご覧下さい。

 

始めに断っておきますが、実はこの原理は正しいかあまり分かりません。(私が勝手に考えて書いてるだけなので...)

なのでまあそんなかんじなんだなぁ位でお願いします。

 

 

今回はPチャネルMOSFETとNチャネルMOSFET両方を使用した場合の設計

NチャネルMOSFETのみを使用した場合の設計

両方を考えて行きます。

 

・ハーブリッジの落とし穴(NチャネルMOSFETのみ)

 

前回も書きましたが、下の回路では残念ながら動作しません。

 

ではどうやって動作させれば良いのかを考えて行きます。

 

 

なぜ上の回路では動作しないのかを考えます。

それはMOSFETが動作する電圧まで達していないためです。

今回使用しようと思っているQ1のMOSFETは東芝様の2SK2231です。

これのしきい値電圧は最大2.0Vとなっています。

 

このしきい値電圧とはソースを基準としたグランド電圧です。

しきい値電圧に達しなければMOSFETはONにはなりません。

 

ですが今回使うマイコンの電圧は5Vです。じゃあしきい値電圧に達しているじゃないかって人もいると思います。(自分がそうでした)

しかしそうではないのです。

 

ここでもう一度スイッチに置き換えてみたいと思います。

本来モーターは電気を流しますが、今回はモーターの代わりに電圧計を置いたと仮定してください。

 

この状態でSW1の所の電圧を測りたいと思います。がこれ実は測れないんですね。

 

理由はスイッチを押してないため、電気が来てないからです。

電圧計のプラスが繋がれている所はどこにもつながっていないですよね。

 

まあ家のブレーカーを落としたら電気が流れなくなる原理と同じです。

 

 

では次に電圧計をモーターに変えたらどうなるでしょうか。

上の方でも説明しましたが、ボタンは押していなければ電気は流れません。

そのためモーターから電気が流れます。あるモーターの抵抗値は16Ωでした。

という事はモーターを抵抗に置き換えることができます。

 

(モーターが動作し始めると逆起電力の関係で抵抗成分が上がる性質があります。

そのため今回はモーターが止まっているという想定で計測しています。)

 

この状態で電圧を測ると0Vとなります。

 

という事はSW1のソース電圧が0Vだからゲート電圧に5Vをかけて上げれば動くのです。

では次にSW1をおしたときを考えて見ましょう。

 

 

 

こうなるとモーターに5Vがかかっているという事になります。

という事は電圧計は5Vになります。

 

電圧計が5Vという事はSW1のソース電圧も5Vになります。

するとゲートに5V + しきい値電圧分 = 5V + 2.0V = 7.0V以上必要ということになります。

 

 

そうなんです。上の理論からNチャネルMOSFETだけを使用した場合、SW1に相当するMOSFETのゲート端子には電源にかかっている電圧 + しきい値電圧分かける必要があります。実際にはしきい値電圧ギリギリで使うのは危険なので、しきい値電圧 + 2V程度と考えておくと良いと思います。

 

 

 

・PチャネルMOSFETを用いた回路

PチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETを組み合わせて動作させることも出来ますが、これはこれでPチャネルMOSFETのゲート電圧を電源電圧にしなければならないので、意味不明ですねはい。
 
ですが、電源電圧を使えば良いので、そこそこ楽に設計できます。
またプッシュプル回路という回路を使えば簡単に実装できるため、そこそこ使える回路だと思います。一応下に参考例を貼り付けて置きます。
 

今回から電源電圧を5Vから12Vに引き上げましたが、もし電源電圧が5Vのままでコンピューターの電源も5Vであればプッシュプル回路は必要ありません。

 

ちなみに今回からダイオードを追加していますが、このダイオードはモーターの逆起電力対策です。一応MOSFETの中にも寄生ダイオードとして入ってはいますが、MOSFETの寄生ダイオードは弱い事があるため、一応補助として入れてあります。よく分からないのであれば入れておいた方が安心だと思います。

 

 

 

・NチャネルMOSFETのみで設計

上の方でつらつら書いていますが、要はNチャネルMOSFETのみでの設計は非常に面倒くさいという事です。がPチャネルMOSFETは非常に使いにくい点からあまり出回っていないのが現状です。しかもNチャネルに比べて高いのも特徴かと思われます。

(詳しい事は知りませんが、Nチャネルに比べてPチャネルの方がウエハーが大きいらしいです)

 

実際に秋月電子通商様ではNチャネルMOSFETは159件の商品がありますが、PチャネルMOSFETは35件しかありませんでした。(2022/05/01現在)

この中からさらにMOSFETのPチャネル Nチャネル混合品みたいな物も含まれているのでもっと少ないと考えられます。

 

またNチャネルが600V30A品が300円程度で出回っているのに対してPチャネルでは60V10A品が300円程度で販売していました。(ただしメーカーの違いがあるため少し誇張しています)

 

 

このような事からNチャネルMOSFETを使いたい気持ちは分かります。

はいよく分かりますよ。

ですが、回路設計が意味不明になります。

(正直私には理解できない回路です)

 

そこで便利なのがそういうめんどくさい回路をまとめてくれたICです。

ハーフブリッジドライバICと呼ばれています。

 

 

ハーフブリッジドライバICを使うことでなんと簡単にNチャネルMOSFETのみでハーフブリッジが出来てしまうのです。(神ICですねはい)

 

それで今秋月電子通商で手に入るICがInternational Rectifier社のIR2302STRPBFというICです。なぜか今表面実装品しか販売されなくなってしまいましたが、昔はDIPタイプのICも販売されていました。私もDIPタイプは4つほど持っていますが、このIC高いんですよね。

 

1つ230円くらいします。(2022/05/01現在)

ですが、回路を1から作るよりもこのICを買った方がスマートに基板設計できますし、プログラムの制御も簡単です。

 

今回はIR2302を使用した回路例を下に貼り付けて置こうと思います。

 

 

IN端子 SD端子にCMOSレベルの電圧を流せば動作します。

もちろんTTLレベルも対応しているので、Arduinoでも動作出来ます。

 

 

 

・IR2302を使うメリット

私はIR社の社員でも回し者でもありませんが、使うということから簡単に宣伝しておきます。
 
・デッドタイムをマイコン側で制御する必要が無い

デッドタイムというのは貫通電流を防ぐための時間です。

唐突に貫通電流って言われても分からないと思うので図で解説します。

またスイッチを使用していますが、SW1とSW2を両方ONにしたらショートしますよね。

FETにしてもそれと同じ事が起こります。

 

FETがOFFになりきっていないときにもう片方のMOSFETをONしてしまうとショートします。

そうすると大事故につながりかねないので、それを防ぐためにSW1をOFFにしてSW2をONにするときは

SW1をOFF -> 少し待つ -> SW2をON 

という形にします。

その少し待つという動作をデッドタイムと言います。

 

本来であればそのデッドタイムをマイコン側または回路側で対策しなければならないのですが、それがいらないというのが神機能です。

 

 

・回路設計が簡単

やっぱり高いICをわざわざ使うメリットはこれでしょう。

本来であれば訳が分からん回路を設計する必要がありますが、簡単に設計できます。

 

 

 

 

 

次の記事では実際にブレッドボードに組んで動かして見たいと思います。