前回、セロハンテープの接着剤痕が、いかにやっかいな代物かを説明しました。接着剤痕の状態によっては取り去ることは難しいですが、できるだけ軽減させています。
除去する方法の一つに、「サクションテーブル」と「溶剤」を使ったやり方があります。
この「サクションテーブル」とは、紙作品の汚れや染み痕の洗浄等に使う器具で、水や溶剤を吸引しながら処置を行います。サクション(suction)とは吸引のことです。
接着剤痕の除去は溶剤を使って接着剤を緩めて、他のものに吸着させる方法で行います。今回の処置では吸い取り紙に吸着させました。溶剤は浸透性が高いので、緩んだ接着剤が回りに広がって染みにならないように、「サクションテーブル」で吸引しながら処置を行います。
実は、作品全体の処置をするような大きな「サクションテーブル」は、とても高価です。ただし、構造はシンプルですので、自作も可能です。伝世舎では、処置をする箇所が大きくないので、小さなサクションテーブルを自作しました。
以前ある先生から、ガラス製の器材を分けて頂きました(写真1)。厚い皿状のガラス容器のような形のサイドに管が着いて、表面の白い部分は細かいガラスの粒子でできた層です。ガラス粒子の層は小さな隙間があって、水や溶剤、空気を通します。ここから吸引します。
これを上手く使ってサクションテーブルを自作しました。意外と大げさな装置になってしまいましたが、その装置をご紹介します。
まず、紙作品を安全に置いて処置ができるテーブルを作ります。厚手の中性紙ボードに写真1の器材を入れる穴を空けます。高さを木材で調整して、ボードに固定します。吸引用のチューブが通るスペースを側面に空けておきます。(写真2)。
写真2 自作したテーブル
吸引するための真空ポンプ(写真3)と、吸引した水や溶剤を溜めるタンク(写真4)の装置を準備しました。
色々と調べた結果、化学実験用の器材で、両方がセットになった「卓上型吸引システム」というものがありましたので、これを購入しました。フットスイッチ付きなのでON、OFFの切り替えも楽にできます。
写真3 真空ポンプ
これらを、チューブで繋ぎ、組み立ててサクションテーブルの完成です(写真5)。
写真5 自作サクションテーブルの完成
次回はこの装置を使って行った、セロハンテープ痕を軽減する処置についてお話しします。