現代美術のハードコアはじつは世界の宝である展 ヤゲオ財団コレクションより
(2014/7/12)
ふだん現代美術展に行くと、ほとんど手のかかっていない作品とか、粗末な素材の作品とか、日用品を並べただけのものとか、本当に意味があるのかと疑いたくなる作品を多く見かけるが、この展覧会は、そういう作品は皆無。有名作家の、見るからに質の高い絵画が次から次に出てきて圧倒される。特にリヒターのコーナー以降がすごかった。これだけの作品群は海外の美術館でもなかなか見られないだろう。
これが台湾の実業家の個人コレクションというのだから驚く。(ちなみに、先日オペラシティで見た「幸福はぼくを見つけてくれるかな?」展も個人コレクションだが、映像が多くて指示書の作品まであって、別の意味で驚く)。
作品の値段にこだわった解説も面白い。ここ10年くらいで現代美術は異常に値上がりしていると思う。ちょっと前までは現代美術で1億円ときいたら驚いたものだが、今は数億円でも普通と思ってしまう。95年に東京都現代美術館がリキテンスタインを買ったとき「漫画に6億円」と問題になったものだが、あの作品も今売ったら数十億円だろう。
今回の展覧会はたぶんほとんどが1億円以上。10億円超えの作品も多いと思われる。
アンゼルム・キーファーが好きなので、2点もあってうれしかった。しかも初期代表作があってびっくりした。「君の金色の髪マルガレーテ」はキーファー画集に必ず載っている代表作(のバージョン違い)。見上げるほどの大きさ。下の部分は藁が巻かれて塗り込められている。藁なのに意外と劣化していない。収容所に入っていたユダヤ人の詩人の詩をもとにしている。収容所に入れられた少女の金髪を表すであろう藁の先には炎が描かれている。
一番良いと思った絵はピーター・ドイグのボートの絵。緑のポップな色使い。ゾンビみたいな不気味な人物。不思議な絵だ。ちょっと前にオークションでドイグの作品が10億円以上になっていてびっくりしたが、こうしてみると高いのもうなずける。
マーク・タンジー。赤一色のリアルな具象画。上半分は水浴する人々、下半分はそれが水に映っているのだが、実像は男、鏡像は女のようだ。タイトルがサントヴィクトワール山なのでセザンヌを連想するが、描かれている場面はセザンヌの水浴を引用しているのだろうか。上半分の風景に描かれている男たちは、デリダなど有名な哲学者なのだそうだ。技術があって、絵の内容も面白い。この作家は気になる。
リヒターが5点並ぶ部屋は圧巻。初期の写真風の絵画も、アブストラクトペインティングも美しかったが、「横たわる裸体」はその中間みたいで珍しい。
ザオ・ウーキーは抽象画と思って今まで気にしていなかったが、意外に良かった。。抽象画っぽくもあるが、風景のようにも見える。東洋の山水画のようでもある。黄色と緑の大きな絵が特に美しかった。どういう塗り方をしているのだろう。
デクーニング。MoMAで見た回顧展で、後半は同じような絵ばかりで良いと思わなかったが、そのころの作品。これが20億円するとは驚き。
サンユウは聞いたこともない画家で、1930年頃の作品だが、良いと思った。中国出身でパリで活動した人。日本人にはフジタが有名だが、同時代で評価(値段)が高いのはこっちだそう。中国人が金持ちだからというのもあるだろうが。それにしても8億円って。ボートとアヒルの絵には笑った。右下にアヒルが20羽くらい、きれいに整列している。素朴でいい絵。
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