となりの部屋の住人がうるさい。
ここに来たときはおっさんのいびきが聞こえてくるほどの壁の薄さに
毎日やれやれと思っていたのだけれどそのおっさんはまもなく引っ越したようで
しばらくのあいだは空き部屋だったみたいだが
去年の秋くらいにいつの間にか誰かが住みついていた。
どうやら何かしらの会社の事務所として使われているようすで
まったくの無音が続いたかとおもいきや昼夜問わず連日騒がしかったりする。
今は風邪をひいているらしく四六時中「ふぇっくしょおおおーん」とくしゃみをしたり
「げほげほげほ・・ぐえっ」という声が聞こえる。
電話の声なんかも聞こえる。
明るいトーンのときなどはおそらく業績好調なのか収入があったばかりなのだろう。
月末あたりになるとボソボソ話していることが多い。
健康状態とか財務状況とかべつに知りたくないのだけども
出張風俗とか呼ぶのはやめてね。
羨ましくなっちゃうから。
私といえばようやく不燃ゴミとの格闘を終えて燃え尽きた。
残るは袋に入りきらなかった粗大ごみと
危険物扱いのもろもろだがこれはどうしたもんだか。
車もないので橇にでも積んでちょっとした修行のつもりで
何日かかけて雪の中を処理施設まで何度か往復しようか悩む。
いや、悩んではないけども。
精神科の待合室と動物園は似ている気がする。
ひたすら歩き回る痩せた白クマ、壁に体をこすり付ける象
一日中寝ているだけのライオン、虚ろな目で遠くを見ているオラウータン。
切符売り場のおねえさんに挨拶して飼育員さんに観察してもらって
いつもと同じ餌を調合されて檻の中に帰ってきた。
同じところに座って同じことを考えて
ときどき頭を掻き毟るゴリラが今の私だ。
ここから出るまでは。