こちらの続き 

 

 

「先生、女ができました」

 

という名言(迷言)を残したリさんから、後日ごはんに誘われたキメてる

 

どうやら彼女を紹介してくれるらしい。

私と夫、リさんと彼女。

4人で食事会。大人っぽい。国際的で健全。

 

リさんが指定してきたお店は、びっくりするほど良い店だった。

照明が暗めで、椅子がふかふかで、店員さんが静か。

 

「あっ…成功してる人のデートコースだ…」

 

と、勝手に感動する私。

 

時間通りに着くと、リさんはもう席に座って待っていた。

 

そして――

 

隣の席が、空いていた。

 

リさん、申し訳なさそうな顔でひと言。

 

「仕事で…来れなくなりました……」

 

女、欠席。

 

あんなに堂々と「女ができました」と宣言していたのに、

主役、まさかの不在。

 

リさんはしょんぼりしていた。

 

しかし料理が運ばれ、夫が参戦し、話題が「彼女の話」になった瞬間。

 

復活。

 

「彼女はですね、とても優しくて…」

「仕事もできて…」

「笑うとですね…」

 

もう止まらない。

 

来てないのに、存在感だけ最大。

 

むしろ彼女、物理的にいない分、理想値が盛られている。

 

結果、リさんは食事が終わる頃にはすっかり元気になっていた。

 

すごい。

彼女、来てないのに。

 

結局、私が中国にいる間、彼女に会うことは一度もなかった。

 

でも、たまに思う。

 

あの角刈りでジブリ好きで、

「女ができました」と言い切る男が、

あんなにも惚れ込んだ女性って、どんな人だったんだろう。

 

私の中ではもう勝手に

 


 

初恋のきた道 [DVD]

 


映画『初恋のきた道』のヒロインの少女みたいな人になっている。


風に吹かれて、無言で走ってて、

たぶんスローモーション。

 

……実際は営業職かもしれない。

 

話はズレる。

 

いつもズレる。

 

でも、リさんの恋だけは、まっすぐだった。

 


 

SAYURI

 チャン・ツィイーーー