最近、世間では麻辣湯(マーラータン)が流行っているらしい。
それを知ったのは、行きつけの麻辣湯屋に行った夏のこと。
店の前に、若い女子が10人ほど行列を作っていた。
……あ、流行ってるんだ。
そう思った。
中国に住んでいた頃、私はほぼ毎日のように麻辣湯を食べていた。
日本語会話担当として働いていた頃、
学校から支給される夕飯弁当を食べたあと、
なぜか「仕上げ」として近所の麻辣湯屋に行くのがルーティンだった。
時は今から18年ほど前。
値段はだいたい10元。
安くて、うまくて、毎日食べられる。
その結果どうなったかは、想像に難くない。
私は麻辣湯とともに、すくすくと育った。
日本に一時帰国した際、
親に開口一番こう言われた。
「……太った?」
麻辣湯は、私に満腹と体積を与えてくれた。
そんな思い出の食べ物が、
時を経て、
今、若い女子たちの行列を生み出している。
感慨深い。
そして、ちょっと複雑。
店が増えるのは嬉しい。
でも、混むのは正直つらい。
私はただ、
静かに、
誰にも流行を悟られず、
麻辣湯をすすりたいだけなのだ。
このブームがひと段落する日を、
ふくよかボディーのまま、
気長に待つことにする。