そして私は気づく。「あ、これ研修なかった系だ」
ドキドキの初日、15時集合
ついに日本語教師デビュー初日。
「まあ最初は研修でしょ。ビデオ見たり、黒板拭き練習したり?」
そんな牧歌的な期待を胸に、私はフワ〜っと学校へ。
…しかし、上海はそんな甘い世界ではなかった。
着席5秒で配属。
「ベレー帽先生の席ここね〜」
到着してまだ椅子の温度も感じてないのに、インイン先生がサラッと指差す。
「ベレー帽先生の席はここ。そして18時から授業よろしくお願いします」
ちょ、、?
待てよ?(キムタク風に)
あと3時間後??
私(え、研修は?チュートリアルは?デモプレイは?)
現実(そんなものはない)
「今日はこの2ページお願いします」
渡された教科書のページ数を見る。
……2ページ。
……2ページだけ?
いや、2ページの“密度”が異常なんよ。
漢字の森か。文法のジャングルか。
青ざめる私をよそに、インイン先生はにっこり。
私「ちなみに…45分授業?生徒は2、3人?」
確認だけでも…と思い、震える声で尋ねる。
インイン先生「生徒30人くらい。授業は3時間です」
かーーーん。
脳内で試合終了のゴングが鳴る。
腰が抜けるってこういう感覚。
安定の魔法の言葉
「大丈夫、何かあったら助けます」
また来た。
上海で一番信用してはいけない安心ワード「大丈夫」。
リンダもインイン先生も、この世界では
“根拠なき自信”が通貨として流通しているらしい。
果たして、あと3時間で準備できるのか
心の準備が…
物理的準備より全然追いつかない。
とにかく私は、教卓に置かれた教科書と運命共同体になり、
放浪中Tシャツのまま、静かに気を失いそうになっていた。
つづく——
