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鹿児島市営電車・バス分会①
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鹿児島市営電車・バス分会②
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鹿児島市営電車・バス分会③
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鹿児島市営電車・バス分会④
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鹿児島市営電車・バス分会⑤
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鹿児島市営電車・バス分会⑥
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原発事故インチキ避難計画と鹿児島市のバス事情(上)
2016年3月 7日 09:20
鹿児島県が県バス協会と結んだ災害避難に関するバス協定は、運転手が浴びると予想される放射線量が「1ミリシーベルト以下」の場合にのみ効力を発するとする裏の取り決めで、有名無実化されたものだった(4日既報)。
バス協定を前提に県内自治体が策定した川内原子力発電所(薩摩川内市)の事故が起きた場合の「バス」を使った住民避難は、事実上“絵に描いた餅”。だまされた格好の県民はたまったものではないが、過酷事故でもきちんと迎えのバスが来るとされる自治体がある。
県都である鹿児島市の一部は、川内原発から30キロ圏内に位置する緊急防護措置区域内(UPZ)。同市によれば、バス協定に参加していない鹿児島市交通局の市バス運転手は「公務員」だから、原発事故でも当然出動する義務があるのだという。「本当だろうか?」――疑問を感じて検証取材を行ったところ、鹿児島市が抱える別の問題が浮き彫りになってきた。(写真は鹿児島市役所)
県民欺くバス協定
先週報じた通り、昨年6月26日に県と公益財団法人鹿児島県バス協会及び33のバス事業者との間に結ばれたのが『災害時等におけるバスによる緊急輸送等に関する協定』。原発事故を含む災害発生時に、県がバス事業者に緊急輸送等の協力を求める場合の要件を定めたものだが、同時に締結された「原子力災害時等におけるバスによる緊急輸送等に関する運用細則」によって、協定自体が有名無実化されていた。
≪協力要請を行うのは、運転手等の計画被ばく量を算出し、平時の一般公衆の被ばく線量限度である1ミリシーベルトを下回る場合とする≫(同細則2条)――つまり、バス運転手に1ミリシーベルトを超える被ばくが予想される場合は、県としてバス輸送の要請ができないということだ。これでは過酷事故でのバス輸送は不可能。バス協定と運用細則はワンセットで、原発事故でのバス輸送を、逆に否定する内容となってる。原発再稼働の前提である避難計画が、虚構だった証明でもある。
市バスの運転手は過酷事故でも出動!?
バス協定に名を連ねたのは、民間のバス事業者33社。県内にある主要なバス会社が協定に参加する――つまりは過酷事故では動かない――という形だが、鹿児島市交通局に所属する市バスだけはその例外だ。災害避難を所管する鹿児島市危機管理課が説明するその理由とは「市バスの運転手は公務員ですから」。“1ミリシーベルト条項”で守られる民間のバスと違い、市バスの運転手は協定の対象外。バス輸送が公務である以上、原発の過酷事故でも出動するのが「当然」(同課の説明)というわけだ。鹿児島市が策定した「原子力災害対策避難計画」には、たしかに次のようなページがある。
これだけ見ると、「204台」のバスが緊急時の輸送にあたると思うのが普通だが、じつは原発事故で緊急輸送に出動するバスは「2台限定」。写真を見るとタイベックを着用した人たちが誘導にあたっており、バスを警察車両が先導している。避難訓練の時の記録らしいが、この写真にある通り、2台のバスしか動かないのだという。
地域限定の避難計画
鹿児島市の原発避難計画は、市内全域を対象としたものではない。川内原発から概ね30キロ圏内にあたる郡山地区だけが避難計画の対象地域で、バスが迎えに行くのはこの地区だけ。いったん原発に過酷事故が起きれば、30キロという区切り自体がナンセンスであることは福島第一の事故が実証済みのはずだが、“市民は勝手に避難しろ”というのが行政の姿勢。さらに問題なのは、地域限定の2台のバスでさえ、動かない可能性があるということだ。
郡山地区での避難までの過程はこうだ。原発の事故が発生し、緊急時モニタリングの結果、毎時500マイクロシーベルトの放射性物質が測定されれば、即避難開始。防災無線や消防車で、≪こちらは、鹿児島市災害対策本部です。緊急のお知らせです。本日午前(午後)○時○分、○○地区で空間放射線量率が○○μSV/h(マイクロシーベルト)検出されました。茄子田(下村)、峠、八重、大浦、常盤、雪平、本岳、里岳(上)、西俣(上)の自治会住民は、○○避難所まで避難することとなりました。自家用車で避難するか、バス乗車用の集合場所に集合してください≫と広報される。計画によれば、下の集合場所に迎えの市バスが来ることになっている。
交通局所有の204台のうち、いずれかの2台が郡山地区に向かうというのが市の計画。運転手が最低でも2名必要だ。しかし、肝心の運転手が確保できるかどうか、あやしい状況であることが分かってきた。
市バス運転手4割は「非正規」
市バスは204台だが、一部は民間のバス事業者に運行を委託しており、バス協定によって逆に守られる民間人運転手は、原発の過酷事故で出動することはない。放射性物質が降り注ぐ中、ハンドルを握るのは「公務員」である交通局所属の運転手だけなのだ。市交通局に確認したところ、公務員運転手の数は153人。204が153に減る勘定だが、現実には、動ける運転手の数はさらに減ることになる。じつは、153人のうち59人は嘱託、つまり非正規の職員だというのである。正規の公務員は92人。まだ数に余裕があると思うのは早計で、取材を進めると市交通局のとんでもない実態が見えてくる。
つづく
鹿児島市 桜島住民避難初動で大失態
原発事故インチキ避難計画と鹿児島市のバス事情(下)
2016年3月 9日 09:35
桜島3.jpgのサムネール画像低賃金にあえぐ市バスの運転手に、「公務員」であることを理由に災害時緊急輸送に従事するよう命令を下すとする鹿児島市。原発事故をにらんだバス協定で民間事業者の運転手が守られる一方、鹿児島市交通局の市バス乗務員は、市の理不尽な姿勢に憤るしかないのが現状だ。
同市の避難計画が、いかに杜撰なものであるかについては、報じてきた通り。災害時のバス輸送でハンドルを握る予定の市バス乗務員が、具体的な避難方法について何も聞いていないというのだから、呆れるしかない。
緊急輸送を命じるのは、国家公務員より高い給与をもらっている鹿児島市のお役人。彼らは「正規の公務員」に限定して出動を指示するとしていたが、どうやらこの公約も守られない可能性が高い。
昨年夏に鹿児島市をおそった緊急事態で、市が災害時の運転業務には就かせないとしている「非正規」のバス乗務員を、住民の緊急輸送にあたらせていたことが分かった。(写真は、鹿児島県庁から見た桜島)
「桜島」住民避難―バス輸送に「非正規職員」
昨年8月、火山性地震が増加したことを受け、桜島の噴火警戒レベルが3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げられた。鹿児島市は、火口近くの3地区に避難勧告。数十世帯が島内の安全な場所に避難した。この時、緊急輸送で動いたのが鹿児島市交通局の市バス。だが、現場到着が遅れたことやその理由は、これまであまり知られていなかった。一体何があったのか――。
災害避難で市バスを動かす場合、乗務員には「正規の公務員しか使わない」とする鹿児島市。念のため、桜島の住民避難でバスの運転を行ったのは、どういう立場の乗務員だったのか市側に確認した。市交通局桜島営業所の業務は、北営業所の業務とともに平成24年4月に民間のバス事業者である南国交通に委託されている。桜島で緊急輸送を担ったのが、南国交通のバス運転手なのか、市交通局の職員だったのか確かめる必要があったからだ。市としては、民間人である南国交通の運転手に緊急輸送を行わせるわけにはいかないはず。案の定、はじめに返ってきたのは「公務員」という回答だった。
それでは、桜島で住民避難に従事したのは「正規」か「非正規」か?災害避難で輸送にあたるのは「正規の公務員運転手」だと主張している鹿児島市のこと、当然「正規」という答えが返ってくるものと考えていたが、なかなか返事がない。ようやく担当職員の口から出たのは「初日は嘱託でしたが……」という言葉だった。
鹿児島市側の説明をまとめると、こうだ。
・噴火警戒レベルが上がって、市が避難勧告を出した段階で、桜島に正規の市バス運転手がいなかった。このため、バスの出動が遅れた。
・やむなく、2名の嘱託職員(=非正規職員)に輸送バスの運転を任せた。嘱託職員は、桜島西エリアを周遊する交通局の「サクラジマ アイランドビュー」の乗務員だった。
・2日目からは、正規の職員を桜島内での輸送にあたらせた。
・こうしたことを受けて、防災計画の見直しを進めている。
運転手不在でバス輸送が遅れた!?――桜島の緊急事態で、市が初動時に失態を演じていたのは確か。しかも、災害時には「正規の公務員しか使わない」と言っていた鹿児島市が、場当たり的に「非正規」を利用。突発的な事態の前に、基本方針は見事に崩されていた。鹿児島市の危機管理体制は、杜撰というほかない。
昨日報じた通り、鹿児島市交通局のバス乗務員給与は、事務系の一般職員を大幅に下回る額。多くの乗務員が手取り10万円台の低賃金に苦しんでいるのが現状だ。非正規である嘱託乗務員は、手当ももらえぬ極貧状態。年2回、10万円が支給されるというが、焼け石に水で、食いつなぐので精一杯だという。しかも1年ごとの契約更新。明日への希望など、持てるはずがあるまい。
一方、災害時の避難計画を策定し、「行って来い」と指示するのは高給取りの事務方役人。彼らは、低賃金で市民の足を守り続けているバス乗務員を、自分たちの都合で使いまわしているだけだ。「理不尽」とは、こういうことを言う。
問われる鹿児島市の姿勢
ここで、川内原発で重大事故が起きた場合の避難計画に話を戻してみよう。鹿児島市の計画では、避難の対象は市内郡山地区のみ。住民の緊急避難で出動するバスは「2台」だ。市側が言う「正規公務員」である乗務員は92人。十分過ぎる人数のようだが、昨日の配信記事でも明らかなように、現場の市バス乗務員たちの大半は災害避難についての具体策を聞かされておらず、出動の指示が出ても即応できない状況。避難計画の実効性は、無きに等しいというのが実情である。
原発事故の際の混乱は、桜島のケースとは比較できない大規模なものになるのが確実。市全体の避難計画を持たない鹿児島市が、対応できるはずがあるまい。結局、たった2台のバスでさえ出動できなくなる。「誰もいないから、あなたが行って」――市が立場の弱い非正規の乗務員に命令を下す可能性があることは、桜島の1件で証明済みだ。
鹿児島市の森博幸市長や市議会の自民党系会派は、市バスの効率化を図るためには民間への業務委託を進めるべきとの考えだ。すでに交通局桜島営業所と北営業所の運営は南国交通に委託されており、事実上の民営化は着々と進行中。だがそれは、いつ大噴火するとも限らない桜島をかかえ、市域の一部が川内原発から30キロという鹿児島市がやる事であるまい。
鹿児島市において、災害時に大量輸送の切り札となる市バスの存在は貴重。民間のバスが「バス協定」に守られ、原発の過酷事故で動かない以上、公営である市バスとその乗務員は市民にとっての大切な財産なのだ。市民の安全・安心を守るという視点からも、安易な民活は許されまい。一方で民営化を進め、他方で災害時に「バス乗務員は公務員としての義務を果たせ」という整合性のない市の姿勢は、厳しく問われるべきだろう。
ちなみに、公表された森鹿児島市長のマニフェストには、次のような項目がある。
(市長公約.png)
どう甘く見ても、現段階では公約違反と言わざる得ない。
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原発事故インチキ避難計画と鹿児島市のバス事情(上)
2016年3月 7日 09:20
鹿児島県が県バス協会と結んだ災害避難に関するバス協定は、運転手が浴びると予想される放射線量が「1ミリシーベルト以下」の場合にのみ効力を発するとする裏の取り決めで、有名無実化されたものだった(4日既報)。
バス協定を前提に県内自治体が策定した川内原子力発電所(薩摩川内市)の事故が起きた場合の「バス」を使った住民避難は、事実上“絵に描いた餅”。だまされた格好の県民はたまったものではないが、過酷事故でもきちんと迎えのバスが来るとされる自治体がある。
県都である鹿児島市の一部は、川内原発から30キロ圏内に位置する緊急防護措置区域内(UPZ)。同市によれば、バス協定に参加していない鹿児島市交通局の市バス運転手は「公務員」だから、原発事故でも当然出動する義務があるのだという。「本当だろうか?」――疑問を感じて検証取材を行ったところ、鹿児島市が抱える別の問題が浮き彫りになってきた。(写真は鹿児島市役所)
県民欺くバス協定
先週報じた通り、昨年6月26日に県と公益財団法人鹿児島県バス協会及び33のバス事業者との間に結ばれたのが『災害時等におけるバスによる緊急輸送等に関する協定』。原発事故を含む災害発生時に、県がバス事業者に緊急輸送等の協力を求める場合の要件を定めたものだが、同時に締結された「原子力災害時等におけるバスによる緊急輸送等に関する運用細則」によって、協定自体が有名無実化されていた。
≪協力要請を行うのは、運転手等の計画被ばく量を算出し、平時の一般公衆の被ばく線量限度である1ミリシーベルトを下回る場合とする≫(同細則2条)――つまり、バス運転手に1ミリシーベルトを超える被ばくが予想される場合は、県としてバス輸送の要請ができないということだ。これでは過酷事故でのバス輸送は不可能。バス協定と運用細則はワンセットで、原発事故でのバス輸送を、逆に否定する内容となってる。原発再稼働の前提である避難計画が、虚構だった証明でもある。
市バスの運転手は過酷事故でも出動!?
バス協定に名を連ねたのは、民間のバス事業者33社。県内にある主要なバス会社が協定に参加する――つまりは過酷事故では動かない――という形だが、鹿児島市交通局に所属する市バスだけはその例外だ。災害避難を所管する鹿児島市危機管理課が説明するその理由とは「市バスの運転手は公務員ですから」。“1ミリシーベルト条項”で守られる民間のバスと違い、市バスの運転手は協定の対象外。バス輸送が公務である以上、原発の過酷事故でも出動するのが「当然」(同課の説明)というわけだ。鹿児島市が策定した「原子力災害対策避難計画」には、たしかに次のようなページがある。
これだけ見ると、「204台」のバスが緊急時の輸送にあたると思うのが普通だが、じつは原発事故で緊急輸送に出動するバスは「2台限定」。写真を見るとタイベックを着用した人たちが誘導にあたっており、バスを警察車両が先導している。避難訓練の時の記録らしいが、この写真にある通り、2台のバスしか動かないのだという。
地域限定の避難計画
鹿児島市の原発避難計画は、市内全域を対象としたものではない。川内原発から概ね30キロ圏内にあたる郡山地区だけが避難計画の対象地域で、バスが迎えに行くのはこの地区だけ。いったん原発に過酷事故が起きれば、30キロという区切り自体がナンセンスであることは福島第一の事故が実証済みのはずだが、“市民は勝手に避難しろ”というのが行政の姿勢。さらに問題なのは、地域限定の2台のバスでさえ、動かない可能性があるということだ。
郡山地区での避難までの過程はこうだ。原発の事故が発生し、緊急時モニタリングの結果、毎時500マイクロシーベルトの放射性物質が測定されれば、即避難開始。防災無線や消防車で、≪こちらは、鹿児島市災害対策本部です。緊急のお知らせです。本日午前(午後)○時○分、○○地区で空間放射線量率が○○μSV/h(マイクロシーベルト)検出されました。茄子田(下村)、峠、八重、大浦、常盤、雪平、本岳、里岳(上)、西俣(上)の自治会住民は、○○避難所まで避難することとなりました。自家用車で避難するか、バス乗車用の集合場所に集合してください≫と広報される。計画によれば、下の集合場所に迎えの市バスが来ることになっている。
交通局所有の204台のうち、いずれかの2台が郡山地区に向かうというのが市の計画。運転手が最低でも2名必要だ。しかし、肝心の運転手が確保できるかどうか、あやしい状況であることが分かってきた。
市バス運転手4割は「非正規」
市バスは204台だが、一部は民間のバス事業者に運行を委託しており、バス協定によって逆に守られる民間人運転手は、原発の過酷事故で出動することはない。放射性物質が降り注ぐ中、ハンドルを握るのは「公務員」である交通局所属の運転手だけなのだ。市交通局に確認したところ、公務員運転手の数は153人。204が153に減る勘定だが、現実には、動ける運転手の数はさらに減ることになる。じつは、153人のうち59人は嘱託、つまり非正規の職員だというのである。正規の公務員は92人。まだ数に余裕があると思うのは早計で、取材を進めると市交通局のとんでもない実態が見えてくる。
つづく
鹿児島市 桜島住民避難初動で大失態
原発事故インチキ避難計画と鹿児島市のバス事情(下)
2016年3月 9日 09:35
桜島3.jpgのサムネール画像低賃金にあえぐ市バスの運転手に、「公務員」であることを理由に災害時緊急輸送に従事するよう命令を下すとする鹿児島市。原発事故をにらんだバス協定で民間事業者の運転手が守られる一方、鹿児島市交通局の市バス乗務員は、市の理不尽な姿勢に憤るしかないのが現状だ。
同市の避難計画が、いかに杜撰なものであるかについては、報じてきた通り。災害時のバス輸送でハンドルを握る予定の市バス乗務員が、具体的な避難方法について何も聞いていないというのだから、呆れるしかない。
緊急輸送を命じるのは、国家公務員より高い給与をもらっている鹿児島市のお役人。彼らは「正規の公務員」に限定して出動を指示するとしていたが、どうやらこの公約も守られない可能性が高い。
昨年夏に鹿児島市をおそった緊急事態で、市が災害時の運転業務には就かせないとしている「非正規」のバス乗務員を、住民の緊急輸送にあたらせていたことが分かった。(写真は、鹿児島県庁から見た桜島)
「桜島」住民避難―バス輸送に「非正規職員」
昨年8月、火山性地震が増加したことを受け、桜島の噴火警戒レベルが3(入山規制)から4(避難準備)に引き上げられた。鹿児島市は、火口近くの3地区に避難勧告。数十世帯が島内の安全な場所に避難した。この時、緊急輸送で動いたのが鹿児島市交通局の市バス。だが、現場到着が遅れたことやその理由は、これまであまり知られていなかった。一体何があったのか――。
災害避難で市バスを動かす場合、乗務員には「正規の公務員しか使わない」とする鹿児島市。念のため、桜島の住民避難でバスの運転を行ったのは、どういう立場の乗務員だったのか市側に確認した。市交通局桜島営業所の業務は、北営業所の業務とともに平成24年4月に民間のバス事業者である南国交通に委託されている。桜島で緊急輸送を担ったのが、南国交通のバス運転手なのか、市交通局の職員だったのか確かめる必要があったからだ。市としては、民間人である南国交通の運転手に緊急輸送を行わせるわけにはいかないはず。案の定、はじめに返ってきたのは「公務員」という回答だった。
それでは、桜島で住民避難に従事したのは「正規」か「非正規」か?災害避難で輸送にあたるのは「正規の公務員運転手」だと主張している鹿児島市のこと、当然「正規」という答えが返ってくるものと考えていたが、なかなか返事がない。ようやく担当職員の口から出たのは「初日は嘱託でしたが……」という言葉だった。
鹿児島市側の説明をまとめると、こうだ。
・噴火警戒レベルが上がって、市が避難勧告を出した段階で、桜島に正規の市バス運転手がいなかった。このため、バスの出動が遅れた。
・やむなく、2名の嘱託職員(=非正規職員)に輸送バスの運転を任せた。嘱託職員は、桜島西エリアを周遊する交通局の「サクラジマ アイランドビュー」の乗務員だった。
・2日目からは、正規の職員を桜島内での輸送にあたらせた。
・こうしたことを受けて、防災計画の見直しを進めている。
運転手不在でバス輸送が遅れた!?――桜島の緊急事態で、市が初動時に失態を演じていたのは確か。しかも、災害時には「正規の公務員しか使わない」と言っていた鹿児島市が、場当たり的に「非正規」を利用。突発的な事態の前に、基本方針は見事に崩されていた。鹿児島市の危機管理体制は、杜撰というほかない。
昨日報じた通り、鹿児島市交通局のバス乗務員給与は、事務系の一般職員を大幅に下回る額。多くの乗務員が手取り10万円台の低賃金に苦しんでいるのが現状だ。非正規である嘱託乗務員は、手当ももらえぬ極貧状態。年2回、10万円が支給されるというが、焼け石に水で、食いつなぐので精一杯だという。しかも1年ごとの契約更新。明日への希望など、持てるはずがあるまい。
一方、災害時の避難計画を策定し、「行って来い」と指示するのは高給取りの事務方役人。彼らは、低賃金で市民の足を守り続けているバス乗務員を、自分たちの都合で使いまわしているだけだ。「理不尽」とは、こういうことを言う。
問われる鹿児島市の姿勢
ここで、川内原発で重大事故が起きた場合の避難計画に話を戻してみよう。鹿児島市の計画では、避難の対象は市内郡山地区のみ。住民の緊急避難で出動するバスは「2台」だ。市側が言う「正規公務員」である乗務員は92人。十分過ぎる人数のようだが、昨日の配信記事でも明らかなように、現場の市バス乗務員たちの大半は災害避難についての具体策を聞かされておらず、出動の指示が出ても即応できない状況。避難計画の実効性は、無きに等しいというのが実情である。
原発事故の際の混乱は、桜島のケースとは比較できない大規模なものになるのが確実。市全体の避難計画を持たない鹿児島市が、対応できるはずがあるまい。結局、たった2台のバスでさえ出動できなくなる。「誰もいないから、あなたが行って」――市が立場の弱い非正規の乗務員に命令を下す可能性があることは、桜島の1件で証明済みだ。
鹿児島市の森博幸市長や市議会の自民党系会派は、市バスの効率化を図るためには民間への業務委託を進めるべきとの考えだ。すでに交通局桜島営業所と北営業所の運営は南国交通に委託されており、事実上の民営化は着々と進行中。だがそれは、いつ大噴火するとも限らない桜島をかかえ、市域の一部が川内原発から30キロという鹿児島市がやる事であるまい。
鹿児島市において、災害時に大量輸送の切り札となる市バスの存在は貴重。民間のバスが「バス協定」に守られ、原発の過酷事故で動かない以上、公営である市バスとその乗務員は市民にとっての大切な財産なのだ。市民の安全・安心を守るという視点からも、安易な民活は許されまい。一方で民営化を進め、他方で災害時に「バス乗務員は公務員としての義務を果たせ」という整合性のない市の姿勢は、厳しく問われるべきだろう。
ちなみに、公表された森鹿児島市長のマニフェストには、次のような項目がある。
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どう甘く見ても、現段階では公約違反と言わざる得ない。
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