前回の続き
最初からは、こちら
いよいよ、持ち込みの日。
下調べ通り、出版社の近くにあるコーヒーショップに、約束の一時間以上前に待機する私。
指の先が緊張でゾワゾワする感覚を味わいながら、約束の時を待つ。
B4サイズの原稿が入る手提げ付きの黒いプラスチックのケースを小脇に抱え、ソワソワと心ここに在らずといった様子で食事をする姿は、いかにも「持ち込みをする前の人」そのものである。
そういえば、入れ違いくらいのタイミングで、私と同じような感じのお客さん(若い女性)を一人見かけたのだが、それが嬉しく心強かった。
焦点の外側で追いかけ、密かにエールを送る。
といっても、もしかしたらプロの方だったのかもしれないし、デビュー目前の作家さんだったのかもしれないのだが。
時間になったので、(というか、ソワソワの限界が来たので)外に出て出版社へ向かう。
ゆっくり歩けば、ちょうど15分くらい前に出版社のビルに着くくらいの、ちょうどいい頃合いである。
ところが、前もって地図でビルの場所を確認して来たはずなのに、それらしきビルが見当たらない・・・。
他の出版社の看板は次々と目に入るのだが、目的の出版社の名前が見つからなかった。
あんなに下準備をしたつもりだったのに、このザマだ。
思わぬところで落とし穴。
必死になって歩き回る。
同じ道を何度もウロウロ。
時間が迫る・・・一時間以上も前から待機していたのに、時間が迫る。
こんな事になるなら、出版社のビルの前まで行って場所を確認してから、カフェでまったりすれば良かった。
自分のツメの甘さを再確認。
・・・・・・・
結局、約束の5分前にビルを見つけて受付を済ませたのだが、どうやってそこにたどり着いたのか、覚えていない。
出版社の受付の女性に持ち込みの約束をしている旨を伝え、編集者の方を内線で呼び出してもらう。
出版社の一階には、囲いのある小さなブースがいくつかあって、そのブースには机と椅子が設置してある。
おそらく、私のような持ち込みの者やプロの方やデビュー間近の方が、打ち合わせをするために使う場所のようだ。
実際、他のブースから作家さんと編集者の方が打ち合わせをしている声が聞こえてきた。
具体的な言葉は覚えていないが、結構厳しめな内容だった気がする。
それにしても、編集者の方の声が大きいのが気になった。熱心なのだろう。
それに対し、作家さんの声は全く聞こえない。
自分もこのように批評されるのだろうか。
不安と同時に脇汗が滲む。
白いシャツを着てきて本当に良かった。
そうこうしているうちに、一人の女性編集者の方が現れた。
次回につづく・・・
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