背信的悪意者排除論は、時効完成後の第三者との関係にも適用されている。最判平成18年1月17日によれば第三者が不動産の譲渡を受けた時点において、他者が「多年にわたり当該不動産を占有している事実を認識しており、・・・登記の欠缺を主張することが信義に反するものと認められる事情が存在するとき」は背信的悪意者にあたるとしている。


背信的悪意者排除論は、先行する物権変動の事実に対する第三者の悪意を前提とするところ、取得時効の場合において、悪意の内容として時効完成に必要な要件を厳密に要求すると、時効取得者が背信的悪意者排除論によって保護される道が事実上閉ざされてしまう。そこで、悪意の対象を「時効による所有権取得の事実」ではなく、「多年にわたる占有」に緩和した。


時効完成後の第三者が背信的悪意者といえる基準を示した点で先例的意義があり、平成10年2月13日 のアプローチではなく、背信的悪意者排除論を採用した点でも意義がある。