櫻葉【風桜車☆4】CuteなSugar | ◆鼻血の嵐とエクスクレモン◆

◆鼻血の嵐とエクスクレモン◆

鼻血の嵐の再掲載 

画像、保存コピーなどしないでください

櫻葉、相櫻中心のブログです

櫻葉【風桜車☆4】CuteなSugar




「雅紀、欲しいものって…?」



「こっち…」



オレはしょーちゃんの手を引っ張って、綿菓子屋の前までやってくる。

それを見て、しょーちゃんの目も輝いてた。

しょーちゃんも買おうとしたけど、オレはしょーちゃんが財布を出そうとした手を止めて、さらにしょーちゃんを自分の背中側に隠すように店の前に立った。


半分こすれば…そしたら、しょーちゃんは、もう1回クジが出来るんだ。


クジ屋は階段を上がったすぐだから、どうせ帰る時に また前を通る。


オレは、しょーちゃんの真似をして、綿菓子屋のおばちゃんと交渉をした。



「おばちゃん!お金無くなったから、、、
えーっと…5割引きの量でお願いします!」



すると、背後にいた しょーちゃんと目の前のおばちゃんが同時に笑い出した。



「雅紀、違うって!
5割引きの量じゃ、半分になるだろ?」



「あ、、そっか…
え?じゃ5割増しで払うの?」



「いやいや、そうじゃないだろ?」



おばちゃんも訳がわからなかったようだ。
お金が足りないのか、おまけして欲しいのか。。。

おばちゃんから『いくらあるんだい?』と聞かれて、オレは80円を掌に乗せて見せた。

おばちゃんは、そこから50円を取ると、デッカイスペシャルな綿菓子を作って持たせてくれた。



「しょーちゃん、、甘いねぇ…」



しょーちゃんの頭よりデッカイ綿菓子に、二人とも顔を埋めるようにして歩きながら食べた。

クジ屋の前まで来て、しょーちゃんの足が一瞬だけ止まる。



「しょーちゃん、あと1回やったら?」



「・・・・・・。
いや、いい!武士に二言はない!」



結局、クジを引くことなく、綿菓子を食べながら階段を降りた。

階段の途中で、“かざくら”を手にした小さい女の子とすれ違う。

“かざくら”には、女の子が幸せになれるとか、いいとこにお嫁に行けるとか、そんな言い伝えもあったんだ。



「雅紀・・・」



綿菓子が小さくなって、神社の灯りも見えなくなった頃、しょーちゃんの足が止まった。



「ん?」



「俺、、やっぱ、あと1回してきていい?
時間ないし、走って行ってくるから、待ってて!」



「あ、うん…
あっ、しょーちゃんっ!
待って、、これも、、2回出来るよ!」



オレは財布の中から、残った30円を出した。

同じように使ったから、しょーちゃんは80円残ってると思ったんだ。
だから、30円を足したら、クジが2回は引ける。



「雅紀、いいの?」



「どうせ貸してもらうもん♪」



もう一等のラジコンカーが当たった気になっていた。

しょーちゃんの荷物を受け取ると、身軽になったしょーちゃんは神社のほうへ走り出す。

オレも、荷物を引き摺りながら、神社のほうへゆっくりと歩いていった。


神社の灯りが見えてきた頃、暗闇の中、しょーちゃんがこちらに走ってくるのが見えた。

近づくと、手を後ろに回していたから、もしかしたら一等が当たったのかもしれない!

隠して、ビックリさせるつもりなんだ!



「しょーちゃんっ!当たったの?」



「う、、ううん…いや、あのさ?」



「しょーちゃん?」



「はい、これ…去年もおととしも、その前も見てただろ?」



後ろに回された手の中にあったものは、“かざくら”だった。

『それから、これ…』と、しょーちゃんはオレが渡した30円を返してきた。



「しょーちゃん…」



「かざくらも、80円にまけてきてやったからな?」



そう……かざくらは100円で、しかも女の子が買うもので、、一度も買ったことはなかった。

うちには弟しか居なくて、家の中にかざくらが飾られることもなかったんだ。


だけど…。


ずっと欲しかった。
キラキラ回る かざくらが大好きだった。

でも恥ずかしくて、じーちゃんにも欲しいって言うことが出来なかったんだ。



「しょーちゃん、、知ってたの?」



「雅紀のことは、なんでも知ってる。」



「しょーちゃん、、、
しょーちゃん、、ありがとう…
大切にするね。」



溶けて小さくなった綿菓子を しょーちゃんに渡すと、オレは“かざくら”に息を吹き掛けながら、クルクルと回した。






***



物産展で、ごねてまで“かざくら”をもらってくるところが、子供の時、桜祭りで交渉しまくっていた しょーちゃんとダブって温かいものを手にした気持ちになる。



「雅紀、夕飯作るから、待ってて…」



オレが体調を崩した時だけ、しょーちゃんが夕飯を作ってくれる。


即席スープで作られた、具も何も入ってない うどん。


クツクツ煮込んで、ちょっと柔らかくなった 通称クタクタうどん。

オレはこれが大好きだった。


しょーちゃんが うどんの他にも買ってきた惣菜やおにぎりをテーブルに並べてる間、オレはクローゼットの上のほうにしまっておいた箱を取り出した。



「雅紀ー、出来たよー!」



「うん、今、行くね…」



ご飯を食べ終わったら、しょーちゃんに見せてあげるんだ。


箱の中には、あの日の“かざくら”が入っている。






…おしまい…


小学生storyでした。

小学生の櫻葉、、、ちょっと書いてみたかった。

鼻血もなく、恋心もなく、まだまだ純粋なんだけど、それでも櫻葉の基盤みたいな絆がある、そんなお話を書いてみたかったんです。


お付き合いいただいた皆様、ありがとうございました。