相櫻【84】◇風見鶏◇
マンションの廊下に出ると、忙しなくセミが鳴いていて、うるさかった。
「夏だねぇ…」
「おぅ、、」
繋がってる手が汗でベタベタなんだけど。
このまま繋いで行くんだよな?
エレベーターで下まで下りて、外に出るとアスファルトの照り返しが顔に直撃する。
歩き出そうとしたら、ふと繋いだ手が離されて、、あぁ、そうだよなって、何故か残念な気持ちになった。
さすがに外では繋がないよな。
離された手を見て、雅紀を見ると、タオルで顔の汗を拭ってから俺のほうを見る。
「しょーちゃん?」
「ん?いや、なんでもない…」
「暑いから、小指にしよっか?」
「小指?」
離された俺の手の小指に、雅紀の小指が絡まった。
指切りげんまんするみたいに。
これは、これで恥ずかしいんだけど!
雅紀は何食わぬ顔で歩き出す。
「繋いでないと迷子になっちゃうからね?」
「迷子って・・・」
俺、大人だぞ?
目新しいもん見つけたからって、急に走り出したりしないぞ?
通知表にだって“落ち着きがない”なんて書かれたことないのに!
「そっ♪迷子になっちゃうよ、オレがね!!」
オレがって・・・・。
お前かよっ!
お前が迷子になったら昼飯食べらんねーし!
おかしいだろ!
連れて行くほうが迷子ってなんなんだよ!
あー、けど、こんな時、社長だったら上手い切り返しするんだろうなぁ。
“相葉さん、手を繋いでたってあなたは迷子になるじゃないですか!”みたいな?
「しょーちゃん?何、ぶつぶつ言ってンの?」
「えっ?あっ、俺、ぶつぶつ言ってた?」
「うん、社長がどーのとか…
雅紀くんが大好きだとか?ふふっ♪」
「おまっ、、そんなこと言っ…
言ってないけど、好きだよ…///」
「うそ…/////」
「嘘じゃねーし!」
「ふふっ、、嬉しいっ♪
まさか、言ってくれるなんて思わなかった♪
やっぱ、こっちがいい♪」
絡まった小指をほどかないように、全部の指が絡まる。
これ、、恋人繋ぎだぜ?
女とだってしたことがない。
「あ、汗、、かかないかな?」
「かくけど、どうせ途中までしか繋げないもん…」
途中まで?
その理由を知らないから、ちょっと寂しい気持ちになる。
恥ずかしいけど繋いでいたい。
誰かに見られたくはないけど、離したくない。
…つぎはぎ…