櫻葉【短パンBダッシュ☆5】CuteなSugar
雅紀が怪我をして、今年の夏休みは、もう部活はいいかーって考えていた。
まぁ、俺は元気だったけど、雅紀をひとりにするわけにはいかないし!(キリッ)
なのに、雅紀はというと、翌朝早くから元気に誘いに来て、片手で一生懸命に俺に靴下を履かせてくる。
「部活、、行くの?」
「行くよ!早く支度してよ!」
「走れないだろ?」
「だから、早くして!」
俺の口に食パンを突っ込むと、俺のスポーツバッグに荷物を準備する雅紀…。
こいつ、、、本気だ(泣)
結局、毎日、午前中は部活の生活になった。
午後はいつも通り、俺の部屋で過ごすことが多かったけど、右手首と右手の人差し指を骨折していた雅紀は、宿題をするのも時間がかかっていたし、なんとなく怪我をした雅紀に触れるのが怖くて、イチャイチャするのを躊躇っていたんだ。
だけどさ?
メシ食うのも左手で、、、うまく食べられないから、食べさせてやったりしてたんだけど。
すんげー、口が可愛いし、ぱくってする時も、もぐもぐってする時も、俺の目は雅紀に釘付けで…。(2回は抜ける!)
なのに、そんな俺に気が付いても、雅紀はというと何を勘違いしてるのか無邪気にニコってするもんだから、毎日、襲い掛かりたくなる衝動と戦うのに必死だったんだ。
だけど、あの日、俺の何かが限界点を突破してしまった。
その日も、部活が終わると体育館へ雅紀を迎えに行った。
雅紀が怪我をしてから、10日ぐらい経った頃だった。
「雅紀ぃ~終わったー!」
「翔!相葉くん、図書室に行ってる。」
「図書室?」
「ちょっと顔色悪かったから…
図書室はエアコン入ってるだろ?」
「悪ぃ、ありがと!」
渡り廊下から、校舎に入る。
少しだけヒンヤリしていたけど、馬鹿みたいに日当たりのいい階段の踊り場だけは異様に暑かった。
今日は、やたらと暑いから、気分が悪くなったのかな…。
だから無茶しないで休めばいいのにさ?
3階の図書室のドアを開けると、廊下なんて比べ物にならないぐらい涼しくて、壁際の机の前に雅紀の背中が見えた。
本棚の陰になっていてわからなかったけど、歩みを進めたら隣に誰か座っていて、小声で談笑している。
ニノだ…。
二人とも後ろ姿だったけど、ひとつの本に目を落としては、指を差したり、肩を叩いたり、同じように小さい声で笑い出したりして、、、すごく楽しそうだった。
なんか、声をかけづらくて、、少しだけ二人を見ていたら、ニノが俺に気が付いて声をかけてくれた。
「あ、櫻井くん、、まーくん、櫻井くん来てるよ。」
まー、、くん?
そんなに仲良かったっけ?
「あっ!しょーちゃん♪
あのね、ニノとあれやってた…」
雅紀が『来て来て』って引っ張るから近寄ると、間違い探しみたいな本だったけど、幼稚なものじゃなくて、かなり本格的な感じのもの。
「へぇ、、すごいね…
こんな本、あるんだ…」
「そぅ、ニノが教えてくれたんだよ。
ね?ニノ?
明日も来る?明日も続きやろ?」
「私は、だいたい毎日来てますから…」
「じゃ、明日も来るからね、オレ!
約束だからな?
じゃ、しょーちゃん、帰ろ?」
「う、うん…ニノも、またな。」
ニノは黙ったまま笑顔だけで挨拶を返してくれた。
そんなことより、明日も…?
こんな風に雅紀から積極的に誰かを誘うって、珍しい。
そんなこと、小学生の頃、野球のメンバーを集める時ぐらいだっただろ?
ずっと気にしないようにしてきていた。
雅紀が怪我をした時だって、やたらと回りから声をかけて貰って、同じ部活じゃないヤツからも心配をされていた。
それは雅紀が少しずつ育んでいた絆なんだと思う。
いや、雅紀は育もうと計算していたわけじゃない。
だけど、いつだって、ひとりのヤツがいれば声をかけたり、落ち込んだ顔をしてるヤツがいれば寄り添ったり、一緒に笑ったりして、雅紀なりの優しさや労りの心が、少しずつみんなに浸透していってて、それが、怪我を発端に一気に明るみに出てきた感じだった。
だから、俺だって、そういう雅紀が築いたものは大切にしたくて、踏みにじらないように注意はしてきたつもりだった。
でも、そんな綺麗事とは背中合わせで、雅紀を独占したいって、雅紀には俺だけを見ていて欲しいって思ってしまう。
まだ、俺だけのもの…そういう自信に繋がるものを、ひとつも持ってなかったからなんだ。
…つづく…
だいたい、短パンBダッシュってなんだよ?