相櫻【73】◇風見鶏◇ | ◆鼻血の嵐とエクスクレモン◆

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相櫻【73】◇風見鶏◇





ほんと いい匂いがする。

ふわふわの襟足に鼻先をくっつけて、すぅっと息を吸い込んで、ふぅっと吐いてる途中だった。


突如、雅紀が勢いよく振り返って、押し倒される。

手首を押さえられて、雅紀の顔が目の前にあった。



「ま、、雅紀…?」



蛍光灯が逆光になって、よく顔が見えないんだけど、怒ってる?



「しょーちゃんっ!?」



「あ、あ、、ごめんっ!
邪魔したよな?
あの、邪魔するつもりはなくて・・・」



「なくて、、なに!?」



うわー、やっぱ怒ってる?
そりゃ怒るか?
集中してる時に、後ろでスーハースーハーされたら怒るよな?



「さみっ、、さ、さみっ、、」



寂しかったと言いたいのに、何故かいらないプライドが邪魔をする。



「寒いの?風邪ひいた?」



雅紀の声色が優しくなって、今度は胸が痛くなった。
こんなことで、心配してくれるんだな。

申し訳なさすぎて、首を振る。



「さ、寒くないっ!
だからさ、、、」



「だから、、、?
しょーちゃん?ほんとにどうしたの?」



「さ、さ、、、寂しかった…のかな?」



「え?」



「ううん、なんでもない!」



「ほんとに?
ほんとに、なんでもないって言う?
オレ、そのまま信じるよ?」



雅紀の声色が寂しそうになった。

瞬時に、雅紀の気持ちを読み取って自分の失態に気が付く。


雅紀が言ってたから。
俺が雅紀を望むようになったらって。

それなのに“なんでもない”なんて言われたら、イヤだよな。

ひとつ深呼吸してから、雅紀をしっかりと見つめた。



「なんでもなくない。
ごめん、、ちょっと寂しかったから。
ちょっと、雅紀に触れたくなって…」



「言ってくれたらいいのに…」



押さえられていた手首が自由になる代りに、身動きがとれないぐらい抱き締められる。


なんとなく、わかってた…。


予想通り、スイッチを入れたんだって。


でも、ギューっと抱き締められて、頭を撫でられるだけで、それ以上のことはしてこない。


ちょっとは期待してんだけど。

ちょっと、ね。


ここまでしておいて、こうも手を出されないと、なんか不安になるっつーか。
不安ではないけども。
立場が逆だったら、確かにいきなり肉体関係に持っていくのもどうかと思う時期ではあるけども。



「雅紀、、俺が望んでるって言ったら、やっぱ、すぐするの?」



「ふふっ、、どうしたの、急に。」



「俺が我慢させてんのかな?って。
ほら、俺も男だからさ?
その、、そういう気持ちがわかるっつーか。
男だったらヤりたいよなって思うから。」



「うん、ヤりたい…
だからね、ベッド買いに行きたいんだよねっ♪」



雅紀は少し身体を起こして、俺の前髪を上げながら、掌を滑らせる。



「ベッド?」



「しょーちゃんと一緒に寝れるベッド、欲しくない?」







…つまさき…