「バイバイ…」
あの男が私の大切なカオリを殺した時、カオリは私を見ながら少しだけ笑ってそう言った。
いつかこうなることは分かっていたけど、あまりにも急すぎて、私には受け入れられなかった。
だから、私は祈り続けた。カオリの亡骸の前で、ただ立ち尽くすあの男に向かって、声にならない声で訴え続けた。だって、私にはそうすることしかできないのだから…
数時間が経った頃、あの男はカオリを毛布にくるみ、部屋の延長コードで念入りに縛り始めた。
もちろん私のことなんてまるで無視だ。ムカつく男。
でも、カオリと離れるのだけは嫌だったから、引き続き私は願いをこめてあの男をにらみ続けた。
カオリを運び出す準備を終えたあの男は、急に何かを思い出したかのように顔を上げ、部屋の中を見回した。
ゆっくりと、何かを探すようにゆっくりと見回し、私と目が合って止まった。
あんな男に私の意思が伝わるわけがないと思っていただけに、一瞬驚いたが、目を離されたら最後なので、更に私はあの男の顔をにらんだ。
するとあの男は、恐る恐る私に近づき、しばらく私を見つめた後、あろうことかニヤリと笑って私の首を掴んだ…………
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殺すつもりがなかったかと言えば嘘になる。確かに俺には殺意があった。
ただ、沸点はまだ先だと思っていたので、我ながら焦ってしまった。
まさか「妊娠した」なんていう、最近は昼間のドラマでも使われないウソに自分が怒りを覚えるなんて思ってもみなかった。
一瞬だけ後悔はしたが、でも、済んだことはしょうがない。
こんなことで俺の人生を終わらせるわけにはいかないから、しばらく考えて、カオリを隠すことに決めた。
カオリの死体を毛布でくるみ、縛るものがなかったので仕方なく部屋にあった延長コードを使った。
夜が明ける前に終わらせなければいけないので、急いで死体を抱え上げようとしたその時、何故か急に誰かに見られている気がした。
ドアはもちろん、窓もカーテンも閉まっている。テレビも点いていない。
誰もいないはずなのに、明らかに視線を感じた。
恐る恐る周りを見回した時、何故かふとテーブルの上にあったヒマワリの鉢植えに目が止まった。
カオリが育てていたやつだ。
鉢植えでヒマワリが育つはずがないと、俺が散々バカにしたので、カオリは意地になって世話をしていた。
何故あんなことをしたのか自分でも分からないが、少なからず愛した女への手向けの香華のつもりだったんだろう。
俺はヒマワリをおもむろに掴んで、カオリの死体と一緒に部屋から運び出した…………
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あの時あいつが私を一緒に連れ出さなければ、遅かれ早かれ私は枯れていただろう。
そういう意味ではあの男には感謝している。
今、私の下にはカオリがいる。
もう少し根を伸ばせば、直接カオリに触れることも出来そうだ。
そうして私は種を増やし、来年も、再来年も、永遠にカオリと共に咲き続けるのだ………
的なこと?