前回は、
水泳から始まった水の記録が、
ハンマー投げ、
柔道、
フェンシング、
そして大学や実業団の陸上選手へと
競技の枠を越えて広がっていったことを紹介しました。
スポーツ選手のデータを追う中で、
著者が注目していたもののひとつが、
「酸素」
でした。
水を飲んだ選手の身体で、
なぜ変化が見られたのか。
その理由を考えていくうちに、
著者の関心はスポーツだけではなく、
もっと大きな問いへ向かっていきます。
「人はなぜ病気になるのか」
第5章は、
この問いから始まります。
■ スポーツの話から「病気」へ
前回まで見てきたように、
著者はスポーツ選手の記録から、
身体に酸素が取り込まれ、
その酸素が血液によって筋肉へ運ばれることに
注目していました。
そして著者は、
この考え方は、
スポーツだけの話ではないのではないか。
そう考えるようになります。
筋肉だけではなく、
脳も、
臓器も、
血液によって酸素を受け取っています。
そこで著者が考えたのが、
「身体の各部へ酸素がきちんと届くことが、
健康に関わるのではないか」
という仮説でした。
■ 著者が最初に考えたのは「酸素」だった
著書では、
人間にとって酸素が
どれほど重要なものなのかという話が続きます。
食事や水分とは違い、
酸素がなくなれば、
人間は長く生きることができません。
著者はそこから、
人間の生命を考えるうえで、
酸素は非常に重要な存在だと考えました。
そして、
その酸素を身体の隅々へ運んでいるのが、
「血液」
です。
つまり著者の中では、
酸素だけを見るのではなく、
「酸素を運ぶ血液が、
身体の細かなところまで流れているか」
という点が、
重要なテーマになっていったのです。
■ なぜ「脳」に注目したのか
その中でも、
著者が特に重要だと考えたのが、
脳
でした。
著書では、
脳は身体全体から見れば
非常に小さな割合しか占めていない一方で、
多くの酸素や血液を必要とする臓器として
取り上げられています。
著者は、
脳に血液がきちんと流れ、
酸素が届けられることが、
身体全体を正常に動かすうえで
重要なのではないかと考えました。
手を動かす。
胃や腸を動かす。
身体のさまざまな機能を調整する。
そうした働きに脳が関わっている以上、
著者は、
「脳へ酸素を運ぶ血液の流れ」
を無視することはできないと
考えたのです。
■ 「病名」ではなく、その前に何が起きているのか
ここで大切なのは、
著者が最初から
特定の病気だけを研究していたわけではないことです。
著者が知りたかったのは、
「この病気には何をすればいいのか」
ということよりも、
そもそも、
「なぜ人は病気になるのか」
という根本の部分でした。
身体の中で何が起き、
どこから健康な状態が崩れていくのか。
著者はその原因を考える中で、
酸素、
血液、
そして脳へと、
少しずつ視点を広げていきました。
■ そして「毛細血管」へ
さらに著書を読み進めると、
もうひとつ重要な言葉が出てきます。
「毛細血管」
著者は、
身体の隅々まで酸素を届けるには、
太い血管だけではなく、
毛細血管の流れも重要だと考えました。
そして関心は、
目に見えないほど細かな血管まで、
本当に血液が流れ、
酸素が運ばれているのか。
というところへ向かっていきます。
スポーツ選手の身体から始まった
「酸素」の話。
それが、
人間の健康、
脳、
そして毛細血管へ。
研究の対象は、
さらに深いところへ進んでいきます。
次回|第14回
「毛細血管まで血液が届く」とはどういうことか

