第11回|なぜスポーツ選手は「疲れにくくなった」のか―著者が考えた水と酸素の関係
同じ運動をしても、
すぐに疲れる人と、
比較的疲れにくい人がいます。
この違いは、どこから生まれるのでしょうか。
前回は、水を継続して飲んだ水泳選手について、
心拍数や乳酸値などのデータを見てきました。
今回は、その結果を受けて、
「なぜ疲れにくくなったと考えたのか」
著者の仮説を追っていきます。
■ 水泳選手の心拍数にも変化が見られた
著書には、水を継続して飲む前と後で、
水泳後の心拍数を比較したデータが掲載されています。
著書によると、
被験者はいずれも継続飲用後の心拍数が低下しており、
そこから著者は、
体力レベルが向上した可能性を考えています。
では、
なぜこのような変化が見られたのでしょうか。
■ 著者が考えた「疲れにくさ」の理由
著書では、
クラスターの小さい水が体内へ入り、
毛細血管の先まで流れることで、
酸素が体へ取り込まれやすくなったのではないか、
という仮説が示されています。
さらに、
筋肉や臓器などの細かな部分まで血液が流れ、
酸素が供給されることで、
体が疲れにくくなり、
連続的な運動にも影響したのではないか。
著者はそのように考えています。
もちろん、
これは著書の中で示されている
著者の仮説です。
水のクラスターと運動能力との関係が、
一般的な科学的事実として確立されている、
という意味ではありません。
しかし著者は、
実際に得られたデータを手がかりに、
その理由を考え続けていきました。
そしてここから、
研究の舞台は小さな飲用試験だけでは
なくなっていきます。
■ 2001年、福岡国際水泳へ
著書によれば、
2000年に中京大学のフィジカルトレーナーや
オリンピック選手のトレーナー、
日本水泳連盟のヘッドコーチらに確認されたのち、
この水は2001年の福岡国際水泳で、
出場選手の飲料水として
採用されたとされています。
つまり、
学生や水泳選手を対象に行われていた検証が、
世界大会の舞台へと
つながっていったことになります。
■ 「日本新記録20個」という記述
著書には、
2001年の福岡国際水泳で
9個のメダルを獲得し、
日本新記録が20個更新されたと聞いた、
という記述もあります。
ただし著者自身、
メダル9個については確認できたものの、
日本新記録20個については
ネット上では確認できていない、
とも記しています。
この点は重要です。
確認できたことと、
確認できていないことを分ける。
DEN LABでも、
著書に書かれている内容を
そのまま断定するのではなく、
どこまで確認されているのかを
分けながら追っていきます。
■ そして北島康介選手へ
著書ではさらに、
その後2004年のアテネオリンピックまで、
北島康介選手をはじめとする
日本水泳連盟の選手へ
水を供給したと記されています。
また、
北島選手について掲載された記事の内容として、
水泳は大量に汗をかくため
水分補給が重要である一方、
北島選手はもともと、
ミネラルウォーターが喉に引っかかるように感じたり、
飲んだ水が体を重くするように感じたりして、
水を飲むことに苦手意識があった、
という話も紹介されています。
水を研究していた話が、
実験室から、
学生へ。
学生から、
競技選手へ。
そして、
世界大会へ。
少しずつ広がっていったわけです。
■ 実験結果から、次の疑問へ
数字が出た。
だから終わりではありません。
なぜ、その結果になったのか。
著者はそこから、
水と酸素、
毛細血管との関係を考え始めました。
そして研究の舞台は、
学生や水泳選手から、
トップアスリートが集まる世界へと
広がっていきます。
次回は、
「アテネ五輪まで続いた、水とトップアスリートの物語」
を追います。

