13」は不吉な数字とされますが、タロットカードでは「転換点」を表すカードの番号に用いられます。今回の「JOJOLANDS」は新たな展開の始まりを予感させる内容になっていました。ジョディオとドラゴナが裏稼業に関わるきっかけが明かされるエピソードでもあり、読む前と後で初回からの兄弟の印象が少し変わるかもしれません。

それでは、感想いってみましょう。


任務を達成し、ついでに新たな仲間も加えてボス・メリルの下に帰還したジョディオ達。だがダイヤ強盗の件が警察に通報されていないことを不審に思っていたメリルは一同を問いただし、ジョディオ達は

「溶岩」の存在とその力についてメリルに打ち明けることにする。

その最中、ジョディオはメリルと出会うきっかけになった過去のある事件を思い返していた。かつて自分と家族に降りかかった、不条理な出来事を。


​①兄想いの弟、その原点

ジョディオが兄ドラゴナを大切にしていることは、第1話から描かれていました。この時はドラゴナにセクハラを働いた警官をスタンド能力込みでボコボコにしていましたね。

そんな苛烈な行動は「兄を守りたい」という想いからきたもの。実はジョディオは過去にも、ドラゴナを守ろうとして苛烈な行動に出たことがあったという事実が今回明らかになります

そこから時間は4年前に遡り、ジョースター兄弟を襲ったある事件が語られます。



​②ジョディオの報復とドラゴナの成長

4年前、ドラゴナは些細なきっかけで同級生の少女から酷いいじめを受けるようになってしまいます。暴言や暴力は当たり前、先生にも助けてもらえず、悪夢にうなされるほどの心の傷を負ってしまったドラゴナ。そんな彼を助けようと立ち上がったのが、当時11歳のジョディオでした。彼はいじめの首謀者の少女にノーベンバー・レインの力で怪我を負わせただけでなく、その翌日にはなんといじめ首謀者の少女含む兄のクラスメイトをスクールバスに閉じ込めて火を放つという行動に出たのです。

ドラゴナへのいじめの描写はとにかく気分が沈むもので、悪くないのに教師から罵倒されたり、クラスメイト達まで暴行に加担する描写は特にキツかったです(一応、助けようとしてくれた子もいたのですが…)。しかも首謀者の少女がお金持ちのお嬢様で、親が学校に多額の寄付をしていたため教師も彼女に口出しできないというのがまた嫌なぐらいリアル。ドラゴナも弟の前では気丈に振る舞っていたものの、理不尽な暴行を受けたこと、その際に味わった恐怖彼の心に焼きついて大きな傷となってしまっていました。そんな兄の姿を目のあたりにしたジョディオは、いじめっ子を徹底的にブチのめそうと決意したのでしょう。いじめっ子もいじめを傍観した生徒もまとめて……という考えからか、スクールバスに放火するというとんでもない行動に出たのでした(ちなみにこの時たまたま火災に巻き込まれたインコだけは助けるという行動もとっています。これのおかげで死者は出なかったものの、負傷者を20名も出すという大事件に発展することに…)。

ジョディオの主人公らしからぬ苛烈な行動に唖然となりましたが、その後のドラゴナの反応はグッとくるものでした。バスの火災が弟の仕業だと気づいた彼は「病院に行った方がいい」と忠告しつつも、弟が自分をいじめた少女への仕返しのために放火騒ぎを起こしたことを理解しており、気付かぬうちに「心が死にかけていた」自分を救ってくれたことへの感謝を述べたのでした。

弟のとんでもない行動を諌めながらも、自分の心を救うためにやったことを理解し受け入れるドラゴナの優しさが心に沁みます。そしてこの後、スタンドを発現していじめっ子につけられた傷を自分の体からスプーンへとずらす描写、ドラゴナがジョディオと自分のスタンドに名前をつける描写も印象的。傷を移動させる描写は、傷つけられた過去を乗り越えて「強くなる」というドラゴナの決意を表しているようで、見ているこちらも救われた気持ちになりました。

しかし、過去の事件はこれだけでは終わらなかったのです。



​③不条理な出来事と救いの手

ドラゴナをいじめた生徒達に強烈な報復を行ったジョディオ。ドラゴナもトラウマを克服してめでたしめでたし…と思いきや、その後待ち受けていたのは不条理な出来事でした。バス火災の騒動から数ヶ月後、ジョディオ達の父親が勤めていた会社をクビになり家を出て行ってしまったのです。これにより母のバーバラ・アンが働くことになったものの、程なくして彼女も家事と仕事での疲労が溜まり体調を崩してしまうことに。更にはタチの悪いギャングが一家を食い物にしようと目をつけ…と、不幸が次々襲いかかります。実はこれらの発端を作ったのは、ドラゴナをいじめたあの少女。彼女の親はバス会社を仕切っており、娘がバス火災に巻き込まれたことを知ってバス会社に高額な保険金の支払いを要求してきたのです。保険会社に勤めていたジョディオ達の父はその支払いを認めたことで責任を負わされ、解雇されてしまったのでした。

兄を守るためにやったことが巡り巡って家族を不幸にするなんて…こんな皮肉な運命があるでしょうか。しかもジョディオに痛い目に遭わされたはずのいじめ首謀者は結果的には何のダメージも受けていない。金持ちの子供だという、ただそれだけの理由で。ジョディオが何度も「なぜ?」と疑問を抱く気持ちもわかります。


そんな中でジョディオとドラゴナに救いの手を差し伸べてくれたのが、現在の彼らのボスであるメリル・メイ・チーでした。この時メリルが二人にかけた

「ずっと『そんな道を』歩く気かい?」

という一言が印象的。「」は「ジョジョ」では運命」と関連する言葉として登場人物のセリフ中に度々登場しますが(「道が一つしかなくても それにかすかにでも考えがあるなら それはきっとうまくいく道」(6部・徐倫)、「道というのは自分で切り開くものだ」(3部・承太郎)、「オレは自分の信じられる道を歩いていたい!」(5部・ブチャラティ))、今回のメリルのセリフに出てきた「道」も「運命」を表す言葉として使われています。彼女の言葉を受け、ジョディオとドラゴナはメリルのもとで働くことを決めたのでした。

メリル校長、こうしてみるとやっぱりすごい人なんですね。ジョディオ達に手を差し伸べた所は5部のブチャラティが社会から弾き出されてしまった者達に手を差し伸べた姿を思い出しますし、人情に篤い人でもあったんですね。



​④次のターゲットは

回想は終わり、再び現在へ。ジョディオ達が溶岩について説明した後、ドラゴナはチャーミングマンをメリルに紹介して彼を仲間に入れたいと申し出ます。チャーミングマンは自分の事情と溶岩を見つけた経緯をメリルに説明すると、新たな情報を一同に明かしました。それは溶岩が見つかったフアラライ山の山頂付近の土地が「HOWLER(ハウラー)」という企業の私有地になっているというもの。弟を捜しているチャーミングマンは「山の上に行けばさらに大きな溶岩があるはず、そこに行けば弟になにがあったか解明できるかもしれない」と考えていましたが、山頂付近の土地について調べようとするとなぜか必ずHOWLERの妨害が入るというのです。弟が失踪した当時、警察やレンジャーがチャーミングマンの証言を信じなかったばかりか彼に疑いを向けたのもどうやらその一環のようで、それを「不条理だ」と評したウサギの言葉に反応するジョディオ。4年前の事件を思い出したのでしょうか。ドラゴナも同じ「弟を持つ兄」だからか、弟のために行動するチャーミングマン気持ちを理解しているようでした。

さて、一通りの話を聞いたメリル校長は新たな仕事を五人に提案します。それは溶岩の力を利用してHOWLERが持つ「権利」を奪い取るというもの!

何らかの方法で権利書に溶岩を近づけ奪うというのが作戦内容ですが、果たしてうまくいくのでしょうか。


今回はかなり重要な回でしたね。ジョースター兄弟の過酷な過去、チャーミングマンからもたらされた新情報、そして謎めいた企業「HOWLER」の存在。回想から新展開へと突入していく一連の流れに、読んでいてワクワクしました!

不条理な運命に振り回されたジョースター兄弟の過去は見ていて辛かったですが、ドラゴナが心の傷を乗り越えて一歩を踏み出した姿は素晴らしかったです。加えて、ジョディオが「大富豪になる」という夢を抱いている理由も見えてきました。この時の経験があったからこそ、自分がメカニズムの頂点に立つ大富豪になることで「不条理な運命」に打ち勝ちたいと考えていたのかもしれません。

行方不明の弟を捜しているチャーミングマンも、ジョディオと形は違えど不条理な運命に振り回された人物です。弟の行方を捜し続けるのは、彼なりに不条理な運命に立ち向かっている証なのでしょう。彼がジョディオ達と共に行動する中でどう変わっていくかが気になる所です。


もう一つ、今回名前が登場した企業「HOWLER」も気になりますね。あの溶岩が採れた火山の山頂-チャーミングマンの言葉通りなら更に大きな溶岩があると思われる場所を私有地にしているというのはどういうことなのか。もしも溶岩の力を知っていてそうしているんだとしたら、富を引きつける溶岩の力を独占しているということになりますが…?

この企業とジョディオたちがどんなふうに対決するか、権利書をどう奪うのかが注目ポイントですね。

次回も楽しみです!