新年が始まって二週間が経ちました。「まだ二週間かあ」と思うか、「もう二週間も経ったのか」と思うかは人それぞれですが、私は後者です。何だか長い時間が過ぎたように感じますね。

さて、今回からは通常の「相棒」に戻ります。可愛らしい人気キャラクターが結びつける二つの事件、その驚くべき接点とは?


そのほっぺには、⬛︎⬛︎が詰まっている。


化学薬品メーカーの社員が、毒ガスによって殺害される事件が発生。特命係は捜査一課から、事件現場で見つかった下足痕と一致する靴を買った人物を探してほしいと頼まれる。

聞き込みのため靴屋へ向かっていた二人は、その途中で人気キャラクター「ほっぺ丸」のキーホルダーが落ちているのを発見。そのキーホルダーのチェーンが引きちぎられているのに気づいた右京は「キーホルダーの持ち主に何かがあったのではないか」と察し、ほっぺ丸に書かれていた名前を手がかりに持ち主の家に急行する。果たして右京の予想は的中し、キーホルダーの持ち主・丹生湊人は登校途中に何者かに誘拐され、母の丹生初音は「犯人から息子を返して欲しければ指示に従え」と要求されていた。事態を知った右京と薫は、別行動を取りながら誘拐事件の謎を追う。すると、誘拐事件と化学薬品メーカー社員の殺害事件との思わぬつながりが浮上。その接点となっていたのは「ほっぺ丸」だった。


​①ほっぺが可愛いほっぺ丸

今回の事件の鍵となる人気キャラクター「ほっぺ丸」。赤いほっぺにカップケーキのようなフォルムが何とも可愛らしいキャラクターです。ほっぺを押した時の「プニプニ」というSEもかわいいですね。

そんな可愛いほっぺ丸のぬいぐるみは、劇中の事件で恐ろしい使われ方をすることになります。何者かがほっぺ丸のぬいぐるみに頬を押すと毒ガスが噴き出す装置を仕込み、それを使って冒頭の殺人事件を起こしたのです。更にその後、息子の湊人を誘拐されたシングルマザー・丹生初音は何故か犯人から「頬を押すと抹茶の粉や牛乳が噴き出すほっぺ丸のぬいぐるみ」をあちこちに設置するよう要求され、様々な人々がそのイタズラにひっかかった様子がSNSで広められ、ちょっとした騒動に発展していきます。一時は「誘拐犯が毒ガスを用いたテロを企んでいるのでは」という疑惑も浮上してヒヤリとさせられました。

誰が何の目的で、ほっぺ丸のぬいぐるみを事件に利用したのか。そこにはほっぺ丸の生みの親を巡る悲しい事情が深く関わっていました。


​②思い出のほっぺ丸

「ほっぺ丸」は、持永凛という若きデザイナーが自分の思い出の絵を元に作ったキャラクターでした。女手一つで自分を育てていた母を励ますためにつくりだした、ほっぺに触れると元気になれるキャラクター。それがほっぺ丸でした。

後にある事情で母と生き別れた凛さんはデザイナーの道に進み、幼少時に描いたほっぺ丸を新キャラクターとして売り出そうとします。それは母との再会を願ってのもので、実際にほっぺ丸は彼女と生き別れた母を再び結びつけることになりました。しかしその直前に凛さんは急死し、彼女の母は娘の復讐に乗り出します。その手段として用いられたのが、ほっぺ丸のぬいぐるみだったのです…。

人に希望を与えるために生み出されたほっぺ丸が、人の命を奪う凶器に利用されてしまうなんて、凛さんも想像していなかったでしょう。更にはほっぺ丸を確実にヒットさせようとしていたある人物の黒い企みが凛さんを追い詰めた上に彼女を死に追いやり、その後の事件へと繋がり、凛さんと接点があった初音さんを巻き込むことにもなってしまいました。凛さんの母は終盤まで娘の死の原因を誤解し続けたままで、自分も命を絶とうとするほど思い詰めていましたが、特命係が真実を明らかにしたことで最悪の結末はギリギリの所で回避されました

凛さんの希望と温かな思い出が詰まったほっぺ丸を利益のために利用しようとした人々への怒りや、希望をもたらすはずのほっぺ丸が復讐のために利用されてしまったことへの悲しみが心にのしかかってくる中、最後に凛さんの母が真実を知って少しだけ救われたことが救いになっていました。


​③その他あれこれ

薫ちゃんがぬいぐるみから噴き出した抹茶の粉を浴びる場面で、「右京の目」の回で右京さんが催涙ガスを浴びて目を負傷する場面を思い出したのは私だけじゃないはず。ヒヤッとしましたが、薫ちゃんが何ともなくてよかったです。

今回の伊丹さんと薫ちゃんは二人で協力して重要参考人を捕まえたり、凛さんの母の家に踏み込んだり、いつも以上に協力的でしたね。他にも芹沢さんと麗音さんが湊人君の捜索に奔走したり、益子さんや土師さんが特命係に積極的に協力してくれたりと、各メンバーにも見せ場があったのが印象的でした。

初音さんは凛さんにとって母代わりのような存在だったのかな。だからこそ、凛さんが不正をしたと知った時に何としても彼女を止めようとしたのかもしれません。そう考えると「自分が凛を追い詰めた」と自責の念に駆られていた初音さんに濡れ衣を着せ、凛さんの母が憎しみを向ける原因を作った犯人への怒りも余計増しますね。

凛さんの母を演じた山下容莉枝さん、前にもどこかで見たことある方だな…と思ったら、シーズン4・第4話で村木重男の奥さんを演じていた方だったんですね! あの時は狂気も感じられる怖いキャラクターを演じておられましたが、今回は母親としての愛情と娘を失った悲しみや怒りを併せ持った人間らしいキャラクターを演じておられましたね。素晴らしい演技でした。


​④次回の「相棒」は…?

次回は、あの南井十が関わってくる話。連続して起きたバラバラの事件に、死んだはずの南井の影が見え隠れし始めます。事件は南井も関わった「逆五芒星事件」を再現したものなのか? 4年前に死んだはずの南井は生きていて、今も他人の心を操って事件を起こさせているのか…?

「死んだはずの人物が生きていた」展開と言えば、薫ちゃんと美和子さんの友人でもあった浅倉緑郎を思い出しますね。またサブタイトルの「」の字の中に十字が入っているのも南井十の名前との関連を感じさせる演出になっています。

次回予告に一瞬出ていた車椅子に乗った人物が南井だとするなら、その傍らにいた人物は何者なのでしょう。彼の協力者、或いは意志を受け継いだ後継者なのかもしれません。この人物の正体も気になるポイントですね。

まさかの展開が来て驚きました…! 次回も非常に楽しみです!