あけましておめでとうございます。元日に石川県で大地震が起こり、予想だにしなかった災害にショックを受けていた中、放送された「相棒」元日スペシャルを観て落ち着くことができました。


今回の元日スペシャルは、右京さんの3代目相棒だったカイト君の家族がキーパーソンとなる物語。婚約者の悦子さんと彼女の息子が事件に巻き込まれ、特命係は二人を守ろうと奔走します。その事件には、カイト君の罪が影を落としていて…。

スペシャルらしいハラハラドキドキの物語、大変面白かったです。では感想にいきましょう!



悪意が強ければ強いほど、正義もまた強くなる。


右京の元相棒・甲斐享の婚約者だった笛吹悦子。妊娠判明と同時に白血病を発症した彼女は、病気を克服し子供を無事出産。享の父・峯秋や享の兄・秋徳の援助を受けながら生活していた。

ある日、悦子の子供・結平の小学校で学芸会が開かれ、右京と亀山夫妻、峯秋、秋徳、社親子が結平の出演する劇を観に訪れた。ところが劇の最中、結平のクラスの担任・姉小路が舞台上で何者かに殺害される事件が発生。事態に気づいた右京と薫はすぐに捜査を開始し、駆けつけた捜査一課の協力と「先生が倒れた時に走り去る人影を見た」という結平の証言を得て一気に犯人に迫っていく。

やがて姉小路の元婚約者・栗原が連行され、自分が姉小路を殺したと自供する。実は姉小路は女癖が非常に悪いことで有名で、結平の出生の秘密を知ったことから悦子を脅迫し、彼女に無理やり関係を迫っていたのだ。栗原は偶然そのことを知り、悦子を守るために姉小路の殺害に踏み切ったのだという。

これで事件は解決したと思われたが、その後栗原が悦子にある「頼み事」をしてきたことから事態は急変する。「頼み事」に何らかの裏があると察した薫と右京は栗原の真意を探るため、悦子と結平を守るために奔走するが…


①悦子さんのその後

右京さんの3代目相棒だった「カイト君」こと甲斐享には恋人がいました。それが今回の中心人物として登場する笛吹悦子さんです。

悦子さんはシーズン13で妊娠が判明したのを機にカイト君と婚約しましたが、それと同時に急性骨髄性白血病を発症。更にその直後、「ダークナイト事件」でカイト君が逮捕されたことで彼と離れ離れになり、立て続けに不幸に見舞われてしまいます。それっきり登場がなく、その後どうなったのかと心配していましたが、今回の再登場で子供が無事産まれ、白血病も寛解したことが判明。甲斐さんやカイト君のお兄さんである秋徳さんに支えられながら暮らしている様子が描かれました。元気にやっている姿が見られてホッとしましたが、実はその裏で大変な目に遭っていたことが判明し、更にはそれが元で事件に巻き込まれることになってしまいます。彼女は何も悪くないのに周囲から悪意を向けられるのが見ていて辛かったですが、その分秋徳さんや特命係が彼女のそばに寄り添い悪意から守ろうとした姿が強く印象に残りました。彼女に支えてくれる人達がいて、本当に良かったです。


②二人の「父なき子」

カイト君と悦子さんの息子・結平(きっぺい)君。カイト君を思い出すような活発な男の子で、「〇〇だぜ」という口調で話したり、子供とは思えないような冷静な一面を見せたりしていました。姉小路が目の前で絶命したのを見た時は取り乱さず冷静に振る舞っていたように見えましたが、実際は怖いのを堪えていたことが後でわかり、やっぱり普通の子だったんだなあ…としんみりとなりました。

そんな結平君の「友達」になったのが、社さんの娘・マリアちゃん。「父親がいない」という共通点を持つ彼女は、結平君の良き友達になります。彼と交流している姿はお姉ちゃんと弟のようで、観ていてほっこりしました。緊迫感ある今回の話の中で数少ない癒しポイントになっていましたね。二人の交流が今後も見られると良いな。

ところでマリアちゃんは「父親代わりの人はいないのか」と訊かれた時に「いない」と答えていましたが、冠城さんのことは父親代わりと思ってないのかな…親戚のおじさんくらいの感覚なんでしょうか。



​③カイト君の家族

今回はカイト君の家族も物語の中心人物として登場していました。特命係の上司である甲斐さんと、カイト君のお兄さん・秋徳さんです。カイト君に兄がいることはシーズン11第9話で語られていましたが、登場するのは今回が初めてとなります。

秋徳さんは財務省の官僚で、父と共に悦子さん親子を支えており、結平君からはお父さん代わりの存在として慕われています。彼自身も悦子さんや結平くんを大切に思っていて、後述する姉小路先生の悪事を知ってからは悦子さんを守ろうと動いていました。

ところで秋徳さん、右京さんに尋問されてイラッとしていた時の姿が何となくカイト君に似ていると思いません? 頼れるお兄さんの一面だけでなく、コミカルなところもあった点が人間らしかったですね。

秋徳さんを演じたのは新納慎也さん。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」や朝ドラ「ブギウギ」などで話題の俳優さんです。この方が「相棒」に参戦されるとは思わなかったのでビックリしました! 


甲斐さんも、今回は良きおじいちゃんとしての一面を見せていました。結平君と話している時の優しい笑顔が素敵でしたね。今までは警察官僚としての甲斐さんやカイト君と接する時の厳しい甲斐さんしか観てこなかったので、今回の甲斐さんの姿はとても印象的でした。



​④悪意を向ける人々

悦子さんと結平君は多くの人々に守られ、支えられてきました。カイト君の上司だった右京さんもその一人です。しかし、親子の周りにいたのは守ってくれる人ばかりではありません二人の秘密に気づき、悪意を向けてくる人々もいたのです。その一人が事件の被害者となった姉小路先生でした。

初っ端から明らかに怪しげな行動をとっていた姉小路先生が想像以上に下劣な人間だったとわかった瞬間の嫌悪感と怒りは今までで一番でした。秋徳さんが姉小路先生の所業を知って怒りを抱いた気持ちはよくわかるものでしたし、もし秋徳さんではなくカイト君があの場にいたら確実に先生をぶん殴っていたでしょうね。それぐらい見ていて腹立つ人物でした(ここだけの話、薫ちゃん復帰後は「被害者がとんでもない悪人だった」というケースが多いような…見ている分には少しスッとしますが)。

もう一人悪意を向けてきたのが、姉小路先生の元婚約者・栗原さん。婚約破棄の恨みから彼を手にかけたと思われていたのですが、後半で彼女もまた悦子さん親子の秘密に気づいていたことがわかってから状況は一変します。彼女の悪意は姉小路先生以上のもので、自分の協力者を利用してまで悦子さんを陥れようとしてきたのです。「あの女は存在自体が罪」「あの女のせいで人生が狂った」と身勝手な主張を繰り返す姿には見ていて腹が立ちましたし、同時に「何故悦子さんがこんな目に遭わなければならないのか」と苦しくなるほどでした。だからこそ、右京さんが栗原さんの主張を一蹴した「彼女には何の罪もありませんよ!!」というセリフがより一層印象に残るものになっています。

カイト君が事件を起こすのを止められなかったことを悔いていた右京さんは、その償いとして残された悦子さん親子を支え、悪意から守ろうとしたのでしょう。右京さんのまっすぐな正義の心が、悦子さんに向けられた悪意を跳ね除け、彼女を守ったのでした。


⑤母と子

今回は三組の「母と子」が登場していました。悦子さん親子、社さん親子、そして「擬似親子」の栗原さんと黒須真士です。真士は栗原さんの協力者として今回の事件の裏で暗躍し、後半では悦子さんを陥れるのにも加担していました。栗原さんはそんな彼を「孝行息子」と呼んでいましたが、右京さんからは「自分を慕っていた者を利用した」と激しく非難されていました。実際彼女は逆恨みから悦子さんを陥れようとした上、真士をも巻き込んで(恐らくは彼にも悦子さんへの恨みを吹き込んで誘導して)いたわけですから、右京さんが激怒するのも無理はありません。真士の方も栗原さんを強く慕っていたようですが、その関係は親子ではなく「利用する者とされる者」。子供を大事にしていた悦子さん親子や社さん親子と比べれば違いは明白です。この二人の歪な関係も結構ゾッとしましたね。


​⑥その他あれこれ

冒頭の結平君が参加した劇は、シャーロック・ホームズの物語を題材にしたものでした。ホームズとワトソンのやりとりを見ていた右京さんの表情が意味深で印象的でしたが、もしかしたら自分とカイト君が一緒に捜査をしていた頃を思い出していたのかもしれませんね。

舞台上での事件のトリックを説明する時の薫ちゃん、「カモン!」を連発したり、伊丹さんとお約束のやり取りを繰り広げていたりと面白かったですね。この場面は探偵小説の一節みたいでユニークでした。

クライマックスの悦子さん救出作戦、まるで映画のようなハラハラドキドキする展開でしたね! 特命係&美和子さん&トリオ・ザ・捜一が団結して悦子さんを助けに向かう展開は熱かったですし、社さんもナイスアシストでした! 何より特命係のアクションがすごくカッコよかったんですよね〜。最後に車で逃げるところは特に映画のワンシーンみたいでした。

初回スペシャルで特命係と溝ができてしまった社さんでしたが、今回の件で少しは溝が埋まったかな…と思います。

クライマックスの場面に出てきた東国の総領事員さん、洋画の吹き替えみたいな声だったな…と思ったら、声優の津田健次郎さんが声を当てていたと知ってビックリ! これまた豪華なゲストでしたね。

検事の階さんが前回に続いて登場。今シーズンでは何回か出てくるんでしょうか? 今後どこで再登場するかが今から気になってきました。

オチで凧の方の「カイト」が出てきたのも洒落が効いていましたね。薫ちゃんの凧揚げもお正月感あって楽しかったです。海外で年越し、というのも今までになかった展開でしたね。




新年早々大変なことになりましたが、その中で放送された「相棒」元日スペシャルに救われました。余震が止まず、エンディングが地震のニュースで打ち切られるというハプニングもありましたが、公式SNSで再放送が検討されていると発表されてホッとしました(ちなみに私はTVerでラストシーンを観ました)。早く余震が治まることと、被災された方々が一日でも早く元の生活に戻れることを願っています。

また、カイト君を演じた成宮寛貴さんが芸能界に復帰するという嬉しいニュースも飛び込んできました! 今回は回想シーンだけでの出演でしたが、もし今後「相棒」に出演されることがあったら、カイト君が右京さんや悦子さんと再会する展開を描いて欲しいですね。


次回第11話は二つの事件が交錯する物語。化学メーカー社員の殺害事件と、あるシングルマザーの子供が誘拐された事件が並行して進み、その関わりを特命係が追っていきます。鍵を握るのは人気キャラクターのぬいぐるみ。かわいらしい人気キャラクターには、何か秘密が隠されているようです。また、次回予告の中にあった誘拐犯らしき声は誰かを憎んでいる様子。誰かへの復讐のために誘拐事件を起こしたのでしょうか? 色々と謎が多い話になりそうですね。


新年、これからは良いことが起こるはずだと信じて前を向いていきたいと思います。そして、私も自分ができることをやっていきたいと思います。被災された方々が一日も早く元の生活に戻れることを心より願っています。