3か月にわたって追い続けて来たアニメ版「宝石の国」も遂に最終回です。

月人と金剛先生の関係について疑問を抱いたフォス。真実を知ろうと立ち上がった彼は……

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変化し続けたが見た物は。

 

獣人型月人『しろ』の一件をきっかけに、月人と金剛先生との間に何か関係があるのではないかと気づいたフォス。その真実を探るため、フォスは自ら月人と対話してみようと決め、来る日も来る日も月人の出現を待ち続けていた。そんな中、彼の周りでは色々な出来事が動き、変わり始めていた。

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アニメ版「宝石の国」もついに今回が最終回。毎回驚かされ、魅入られて来たこのアニメと今日でお別れだと思うと寂しいです。

それでは、最後の感想に参ります。

 

まず最初はパパラチアのエピソードから。朴璐美さんの声がぴったり合っていてカッコイイ。男性的なパパラチアにピッタリの声でしたね。

パパラチアとルチルの会話からは、彼ら二人の絆の強さが伝わってきます。初めてルチルが悲痛な表情を見せたのにも驚きましたが、それ以上に彼の「あなたの不運を克服できなければ 私の医療は何の意味もありません」という台詞が心に刺さる。そんなこと言わなくたってルチルは十分凄腕なのに、と画面の向こうから彼を励ましてあげたくなるほどこの言葉は悲痛でした。どれだけ医術の腕を上達させても大切な友を救えない、その苦しみがどれほど彼の中で大きなものになっていたのだろうと思うと悲しくなります。それと同時に、彼とパパラチアがとても絆の強いコンビだったのだと分かる部分もあり、なんとも切ない気持ちになりました。パパラチアとフォスの会話シーンも印象的でした。離れて暮らしていたきょうだい・あるいは親子が久々に再会したかのようなほのぼのとした雰囲気から入り、今後のフォスの行動を決定づけることとなる会話に入ると二人のいる場所に雲の影がかかって雰囲気がガラリと変わるという映像演出にぞくりとしました。

 

次は周囲の宝石達の変化から。フォスとコンビを組んでいたボルツは、今度は新たにジルコンとコンビを組むことになりました。ガチガチに緊張しながらも先輩と初対面を果たすジルコンでしたが、ほどなくしてボルツがなかなか会話してくれないことに悩む羽目になり…。

フォスとジルコンのやり取りの場面は、土下座しながらフォスを追いかけてくるジルコンと逃げるフォスに笑わされ、その後のジルコンの言葉にしんみりとなりました。齢が近い二人の会話が描かれるのはこれが初めて。と同時に、ジルコンの隠れた心情やフォスの心情が語られたのが印象に残りました。真面目すぎるが故の悩み、初々しくてとてもいいですね。

その後のイエローダイヤがメインとなる場面は、これまたルチルとイエローのやり取りで笑わされ、その後のパパラチアへの独白でしんみり、と緩急がついた展開になっていました。独白の場面での色使いは、背景の夕焼け空や夕日の光がイエローの髪・パパラチアの髪の色とマッチしていて美しかったです。

 

フォスの回想シーン。まだ幼かった頃のフォスと宝石達、そして第2話冒頭のナレーションともつながる金剛先生の台詞。まだ何も知らなかった頃の記憶を思い返すというのがなんとも切ない。そして、この場面で実はヘリオドールが出ていたというのにびっくりしました。原作ではあのセリフを言った子供宝石はモルガかと思っていたので(原作7巻に出て来たヤングモルガの姿がヘリオドールと似ていたのでてっきりモルガかと思っていました)。第1話で断片だけの姿となって戻って来たヘリオドールのかつての姿が垣間見られた貴重な場面です。

『優しい子だ』という金剛先生の台詞も心に刺さる。これを見た後で原作の最新の展開を見返してみると……ああ。

また、この後の場面では前回ものすごい戦いぶりを見せたアレキサンドライトが月人の研究にこだわる理由も明らかになり、なんとも切ない気持ちになりました。相棒を奪われた憎しみを忘れないために月人を研究していたという動機が何とも悲しい。前回見せた「赤いアレキ」は戦闘狂ではなく復讐鬼としての姿だったのか。これまでコミカルだったアレキの違う側面が見えて何ともしんみりとなりました。

 

その後のフォスが月人との会話を試みる場面では、第1話のシンシャの戦闘シーンと対になる構図でフォスが月人に飛びかかる様子、そして月人が初めて声を発する展開が描かれます。月人の目に一見が出現する様子も不気味でぞくりとさせられます。

そしてこの後は、原作とは異なりシンシャがフォスを助けに来るという流れに。ここで第1話のシンシャの戦闘シーンを彷彿させる描写が描かれ、「おおっ!」となりました。「ありがとう 助かったよ」と言われた時にシンシャの周りの毒液がトゲトゲした形になっていなかったということは、シンシャはフォスのお礼を素直に聞いてくれたということなのかな。

その後のフォスが合金でシンシャの形を作る部分は3話でシンシャが毒液でフォスの形を作った場面と対になっており、シンシャが夜崖下で目覚める場面は第1話の冒頭の場面と対になっており、と最初と対になる描写が次々に出て来て、もう圧倒されっぱなし。こんな素敵なオリジナルの演出が来るなんて思いもしませんでした。最初の頃との対比、何とも印象に残る演出です。

 

フォスとシンシャのやり取りでは初めてコミカルな描写が描かれ、「捕まえようとしてるだろ!」「そんなこと…」というやり取りの合間にちゃっかりフォスが合金で投げ縄と網を作っている描写にクスリと笑わされました。

そしてその後、シンシャがあの時のフォスの言葉を一字一句すべて覚えていた、というくだりで胸を打たれ…。

このくだりは猛烈に切ない。フォスが忘れてしまったあの時のこと――「夜の見回りより ずっと楽しくて 君にしかできない仕事を 僕が見つけてみせるから」という言葉をかけられた時のことを覚えていた、という部分が胸に刺さります。フォスが体の一部と共にこの記憶を忘れてしまっても、シンシャはちゃんと覚えていた。それは一見フォスに冷たくしていた彼が、初めての「友達」となったフォスのことを大切に想っていたことの表れでもあったのです。だからこそ、シンシャはあの時のことをずっと覚えていたのです。それをフォスが忘れてしまったというのは、あまりにも辛い対比になっていて、もう……。

「だから絶対 僕には君が必要だ」という言葉も、この展開と合わせてガツンと響きます。これを見た後で原作8巻のあの展開を見ると……。

 

最後は宝石達の日常、そして第1話と対になるカットが入って幕。モルガがフォスを呼びに来る部分は1話と同じでしたが、あの時とはもう何もかもが違う。背後のモルガとゴーシェの会話も最初と同じだけれど、あの時の明るく無邪気だったフォスはもういない。過去のフォスの後ろを現在のフォスが歩き去っていくという構図も過去と現在の対比を目に見える形で現していて、何とも不思議な雰囲気でした。

 

映画のようなエンドロールと、そのバックに流れるオーケストラアレンジのオープニングテーマ。物語の締めにふさわしい、そして先が気になる終わり方でした。見事な映像表現と美しさで大きな話題を呼んだ「宝石の国」、これだけ大ヒットしたのなら第2期も確実に作られるはず。ここから先の展開は更に過酷なものになっていきますが、同時に物語の核心にも更に近づいて行きます。オレンジさん、ぜひぜひ、第2期も製作してください!

 


というわけで、「宝石の国」アニメ版の感想はこれにて終了です。長いようで短かった全12話。途中アクシデントもありつつしっかり最後まで駆け抜けたわけですが、終わってしまうとやはり寂しいですね。来週からはロスが大きくなりそうだ。
原作の方は物語が佳境に入ってきており、こちらも本誌連載分で最後まで追いかけていくつもりです。twitterでちょこちょこ感想を上げていきますので、見ていただければ幸いです。
それでは、またアニメ感想を書く機会があればお逢いいたしましょう! そして「宝石の国」の第2期製作発表を楽しみに待っております!
 

 

《原作との相違点》

・ストーリーの流れが原作と変わっており、三十話冒頭のイエローダイヤとルチルの会話シーンは原作ではパパラチアが再び眠りに就いた場面の後に入るが、アニメ版ではジルコンとボルツが初めて会話を交わした場面の後に入る。

ジルコンとボルツ・フォスが虚黒点を見る場面がカット

・ジルコンがボルツと別れた後の場面で、イエローダイヤがジルコンに声をかける部分・その後のイエローダイヤとアレキサンドライトの会話の部分がカット

・フォスが金剛先生の授業を受けた時のことを回想する場面で、先生に「その子は戦うんですか?」と聞いた宝石は原作では誰なのか語られていないが、アニメ版ではヘリオドールであると語られている(字幕で名前が分かる)

・フォスが月人と対話しようとした時に駆けつけてきたのは原作ではアメシストだが、アニメ版ではシンシャに変更されている。

・フォスがシンシャの「新しい仕事」を思いつくのは原作では三機同時に出現した月人との戦闘の後だが、アニメ版ではシンシャに助けられた後に変更されている

ゴーストクォーツが登場する場面が全面カット