双児宮 26.囚われの身を去り難く

―5月26日―

兄妹は相変わらず囚われの身だった。
兄は病院の中に閉じ込められ、毎日の怪我と病のせいで満足に動けない。
一方妹は外の世界で普通の生活を送っていたが、毎日兄のいる病院へ通い、ともに「実験」を受けるという約束を課せられていた。
二人は毎日「実験」にかけられ、全身傷だらけにされる。
不死身の体質のおかげで怪我は一晩寝ればほぼ治るが、毎日の実験のせいで新しい傷が次第に増えていった。
――あの女、あの女さえいなくなれば!
皐月はイライラと貧乏ゆすりをする。今日は足を傷つけられなかったので、貧乏ゆすりをしても痛みが走らずに済む。
今の兄妹の担当医である女医――何らかの理由で医学界を追放されたその女は、兄妹の不死性を試す実験を繰り返していた。
彼女は不死性の研究を行うことで自分の権威を取り戻そうとしているらしい。そのおかげで、兄妹は「データを取る」という名目で毎夜毎晩散々傷つけられていた。
畜生! と皐月は思わず毒づいていた。
あの女はいつまで自分達を囚われの身にしておくつもりなのか。
兄は自分一人でも逃げろと常日頃言うが、こっちはそんなことできる筈もない。
あの女も、それを知っていて兄を人質に取り、自分を捕えているのだ。
要するに、自分達は、バラバラの場所にいながら二人いっぺんに捕えられているのだ。
――ああ、本当に、誰か助けに来てくれれば!
皐月は苛立ちを抑えられないまま、窓から月を見上げた。

囚われの身を去り難く、故に兄妹は未だ籠の中。