双児宮 24.ほんとうに光ならいいのに

―5月24日―

あの子がほんとうに光ならいいのに。
そう思って幾星霜の月日が過ぎただろう。
俺と妹が子供の頃に出会ったあの子は、本当に光の様な存在だった。

俺は、生まれつき病気を背負っていた。
「アルビノ」と呼ばれる、全身の色素がない病気。
そのせいで普通と違う姿をしていた俺は、幼い頃から悪童にいじめられることが多く、塞ぎがちだった。
それに加えて、俺はもう一つある特殊な病気を発症した。
それが、この長きにわたる入院生活の原因となったのだ。
毎日の検査、体の痛み、異様な空腹感。
そして――俺達兄妹に目をつけたあの女。
何もかもが苦痛だった。アルビノというだけで珍しがられ、珍しい病気を持っているというだけで珍しがられ、どこへ行っても奇異の目で見られる。
妹はそんな俺を守ろうとしてくれていたが、俺は妹のことが心配でならなかった。いつか倒れてしまうのではないか、神経をすり減らしてしまうのではないかと心配でならなかった。
そんな時に出会ったのが、あの女の子だった。
「スミレ」という名前のその女の子のことを、俺は今でもよく覚えている。
――あの子は、俺のことを、「綺麗だ」と言ってくれた。
気味悪がることも珍しがることもせず、ただ純粋に綺麗だと言ってくれたのだ。
彼女は俺達よりもずっと年下だったが、小さい子とは思えないくらいしっかりしていて、俺達は何度も彼女に励まされた。
俺達にとって、あの子は光のような存在だった。
彼女は、希望の光そのものだった。

そのスミレと会えなくなって、もう何年にもなる。
ここには光はない。俺も妹も、もうだいぶ摩耗している。
あの子は――スミレは今、どうしているだろう。
俺達を救ってくれたスミレは、今どこにいるのだろう。
――俺達に、救いはあるのだろうか。希望の光は差すのだろうか。

そんな風に思っていた時だった。
思いがけず、光が差し込んできたのは。
俺達に、救いの手が差し伸べられたのは。