Bana’s story -6ページ目

Bana’s story

ここではBanaがダークファンタジー系の小説を投稿しています。
不定期な上、創作で他キャラをお借りする場合があります




「・・・・・・雪、すごいね」
二人きりになってしまった警察署の中、コーヒーの入ったマグカップで両手を気持ちばかり温めながら、
ポニーテールを震わせてフィロはつぶやいた。
「寒い・・・二人だけだとさらに」
ウィリアムは少し素っ気なく返す。その鼻はちょっぴり赤くかじかんでいた。
フィロの机の上にも、ウィリアムの机の上にもマグカップがあり、白く弱々しい細い煙が二本たった。
「・・・デイヴィッドは?」
フィロはいつもこの13時にはデスクについているはずのデイヴィッドがいないことに気がついた。一番の年上が何をしていると感じた。
「あぁ・・・止めたけど、」
ウィリアムは共用のコートかけをペンで指した。
「・・・・・3日前の、児童2人轢き逃げの現場をまた見に行った」
3日前の午後。まだ雪が浅かった日。
16時に公園の近くで、児童2人が両足を骨折する轢き逃げがあった。子どもが好きなデイヴィッドは目を光らせたが、3日たった今もまだ犯人は見つからないままだった。
「う、うそ、こんな中で?!」
フィロはもう一度窓の外を見る。雪はゆっくりと落ちて行くものの、量が多い。俗に言う、地面からしんしんとこみ上げる、粘っこい寒さだ。
デイヴィッドのマフラーも傘も、コート以外の防寒具は全て置いたまま。コートも薄く、とても防寒具にはなれていない。

フィロはマフラーとコート、傘をひっつかむと外出確認のため、書類にペンを走らせた。そのまま、ウィリアムの顔を一度見たきり、外へ飛び出した。







「・・・・」
公園の前には、まだ黄色と黒のポーンが10つ、周りを囲うようにたっていた。
アスファルトに滲んだ赤黒い血は、雪で霞んでほとんど見えない。
公園には、誰もいない。
デイヴィッドは素手のまま、植木に積もっていた雪をすくった。雪は手にとどまり、溶けない。
「・・・・・・寒く・・・ないな」
空を見上げても、白い雪がぷつぷつと落ちてくる、青灰色の空が広がるばかり。


「デイヴィッド!!!!」
笛の音のような甲高い声。
遠く背後を振り向くと、遠くに真っ黒の傘が見えた。どんどんとこちらに近づいて来る。
デイヴィッドは、無意識にハンドガンに手をかけた。
白いもやから徐々に姿がはっきりしてきた。萌黄色のポニーテール、燃えるように赤いマフラー。細いシルエット。紺の女警官服。緑のネクタイ。
「・・・フィロ」
ハンドガンにかけていた手を力なく下ろした。フィロの雪のついていない姿を見ると、自分の雪まみれの姿がおかしく映った。
「う、うぅわあ…何やってるんですか!」
フィロは黒い傘を片手に、いつもの黒い手袋をした手で、デイヴィッドの服の雪をはらいはじめた。
「悪い・・・でも、寒くない。邪魔だと思ったから何も持って来なかっただけで、」
「こんなクソ寒い中で、何をいってるんですか!?」
手袋を外すと、デイヴィッドの頬に手を添えた。頬は氷のように冷たくなっていた。フィロはいつもの怒った顔をデイヴィッドにして見せた。デイヴィッドの方がはるかに年上だが、この顔はいつもされる。

「・・・・・・お前、」
デイヴィッドは驚いたようにフィロを小さく見下ろす。
「・・・手が熱いぞ?」
フィロはさらに怒って見せ、あえて何も言わずにデイヴィッドの両目を見つめた。
「・・・・・・・・・・俺が冷たいのか」

フィロの頬に添えられた手に、自分の手を添えた。吐息が白くたまっていく。
灰色の空の世界が、歪んで、うるんで見え始めた。
フィロは自らに巻いていた赤いマフラーを片手でとり、片手でデイヴィッドの首に巻きつけ、
傘を持つ腕を伸ばし、デイヴィッドの頭も入るように近寄った。
デイヴィッドは両手をフィロの背中に回し、自分の背中を少し折って抱き締めた。




「・・・・・寒い」
「やっとですか」
フィロは着忘れて腕にかけていた黄土色のコートを、デイヴィッドの広い背中にかけた。




End

雪が積もったので、雪ネタ(・ω・)
お借りキャラなのであしからず


スカーレットフォレスト、「紅の森」内部。
大昔に越して来た、日本のビースト持ち貴族。「不林滅家」。



不林滅城は広い上に大きい。そのうえ、裏に大きな墓がいくつもある。
フィーンドはその墓に目もくれず、不林滅城へと足を運んだ。
所々で立っては叫び散らす黒子の大群。目の前に立ちはだかる黒子は蹴散らした。
その声など、耳に入らなかった。


フィーンドは、一つの大きすぎる大広間に足を落ち着かせた。
ガラガラ、と、室内のガラリ戸を開け、中に入るとゆっくりと丁寧にしめた。
そして、部屋の一番奥を見る。机などがあるはずの場所には、なにもなく。
大きな床の間には、

「よぉ、虎魔六」
鎖に両手両足、首を床の間に繋がれた17歳の少女。
伸びきった黒い髪が散らばっている。きり、きり、と、痛々しい鎖の音が響いて来た。虎魔六がフィーンドに気づいた証拠だ。
「ふぃー・・・ん、ど・・・?」
「ああ」
フィーンドはゆっくりと床の間まで歩み寄った。広いからだろうか、暗いからだろうか、虎魔六のもとまでとても長い気がした。虎魔六は肩から指先くらいの長さの鎖に繋がれたまま、ぺたんこ座りのままだ。着崩した赤と白の着物が邪魔そうにしなっていた。
フィーンドは虎魔六の前で膝をついた。
「ちょ・・・っと・・・久しぶり・・・だ、ね・・・」
「悪かった。ちょっと忙しかったんだ・・・久しぶり」
フィーンドは虎魔六とおでこ同士を合わせた。虎魔六がもっともっと小さい頃からの二人だけの挨拶だった。
「声、またかすれたな・・・」
「ちょっと・・・ね・・・出し辛くなった・・・だけ・・・」
せめて仕草だけでも女の子らしくしようとしたのか、鎖をきりきり言わせながら両手を膝においた。その動きが少し可愛く見えて、頬が緩んだ。
それとも激しい年の差からだろうか。
「もう少しだからな。もう少し・・・そしたらその鎖とって、また自由にしてやる」
「うん・・・」
「また遊ぼうな。いつかのクリスマスに行ったデパート、行きたがってただろ・・・それにあの公園、あとかなり前に約束したフロストフェローの遊園地とか、それから・・・」
フィーンドの頭の中で、思い出が次々に蘇る中、虎魔六の目からぽろぽろ涙が落ち始めた。

「虎魔六」
うつむいてしまった虎魔六の両頬に、フィーンドは両手を添えて優しく前を向かせた。
「小さい頃はこのくらいの髪の長さだったよな・・・」
「ふぃ・・・ん・・・ど・・・」
「昔のクリスマスにした予約、今ならもう意味がわかるだろ」
虎魔六の左手の薬指には、銀色に光る指輪がはめられていた。
「・・・えへ・・・えへへ」
小さい、かすんだ笑い声だった。それが悲痛な叫びにも聞こえたフィーンドは、その声の元を、自分の唇で止めた。




「必ずここからまた出す。だからあと少しだけ待ってろ」
「う・・・ん・・・フィーンド・・・の、こと、し・・・信じて・・・る」
悲痛な泣き声がまた聞こえた。鎖が床にぶつかる音。部屋の外でどよめく声。
フィーンドは立ち上がった。
「・・・また、明日の夜にゆっくり来る」
「うん・・・ま、たね・・・」
無理に笑う虎魔六の頭をもう一度なで、黒子のどよめく廊下へと再び足をはこんだ。



End