それいけ凡人くん! 第一回
「チョリッス~wwwww 香川翼っスwwwwww よろしくwwwwウヒヒッ」
俺は新しいクラスメイトのふざけた自己紹介を軽く聞き流していた。そのクラスメイトはいかにもなチャラ男だ。高校デビューということで張り切り過ぎたのだろうと考察する。だがしかしその自己紹介の仕方は多分数年後、後悔の念に苛まれることは請け合いだな。しかも翼という名前は明らかなDQNネームときてる。
「どうも、山田一郎です。趣味は読書です。宜しく」
俺の番が回ってきたので席を立ち当たり受け狙いもせず、障りのない自己紹介で手短に終えてから再び席に座る。もっと俺のことを知りたけりゃ続きはWEBで! ってわけではないが、アレコレ長く話す程俺はまだ人間的に厚みはない。
普通のやつ、怖そうなお兄様方、おさせっぽい女生徒、オッスオッスが好きそうな血生臭い眼鏡女子とか一通りの紹介が終わると、最後の一人の番がやってきた。
ガタン、と椅子がぶつかる音がして、そいつは席を立った。興味ない俺は欠伸をして、窓際の外の光景を見た。校庭にはひとっこ一人もいない。春の陽射しが憎いぐらいに眩しい。
「涼谷晴彦です。ただの人間には興味ありません!」
そいつは素っ頓狂な声でいきなり張り上げた。クラスじゅうの視線が集まり、俺もその仲間入りをした。
「この中に宇宙人、異世界人、未来人、超能力者がいたら僕のところに来なさい、以上!」
静まり返る教室。俺はどのようにしてこの状況を打開するべきか自答自問してみたが、昨今の世界同時不況のように、打開策なんて見つかりはしない。そして俺はこの状況と静まり返った空気の中で噴出しそうになるのを押さえつつ、次の一手を待つ。
「あー、それじゃあ、自己紹介は終わったな」
担任の泉谷茂先生(物理担当)はまるでさっきまでの空気が最初からなかったかのように、事態を終わらせた。さすがは勤続30年の年季の入った教師だ。こういう手合いはスルーするに限る。話に乗るとはしゃぐからな。
涼谷はというと、振り上げた拳をどこに振り下ろしていいのか分からない表情になって、そして席についた。やっちまったな……。
中間休み、素っ頓狂なマジキチな自己紹介をした涼谷はクラスの怖いお兄様方数名に囲まれて、さっそく弄られていた。
「なんだよテメェ、その、宇宙人ってよぉ~wwww」
「こいつ、馬鹿だろwww」
おらおらと涼谷は顎を掴まされている。キモイアニオタとか、一生童貞とか、やんわりとした罵詈雑言を浴びせかけられている。
そんな涼谷はというとすっかりと顔が青ざめている。恐らく、彼はこれからの三年間、彼らのオモチャとなり時にはかしづき、お財布となる存在となるだろう。ま、限られた世間ではメイドとか執事ブームらしいからそれもよかろう。ただし彼らの多大な要求と「かわいがり」に彼が耐えられるだろうか。
俺はそんな光景を見つめつつ思った。
「意外とまともな学校なんだな」
と。
(たぶん、続く)