正直、正確には覚えていない。
服が好きになって、のめり込んで、激走してきた始まりが一体いつだったのか…

 私は、秋田県の中でも最北に位置し秋田・岩手・青森3県の県境にある鹿角郡という人口7000人程度の小規模な町に生まれた。一昔前は鉱山産業で栄え、町の規模には多すぎる位の住民がいたと記憶している。まあ、俗に言う「ど」が付くほどの「ど田舎」だ。そんな田舎で育った為か、社会に出るまでのあいだ本当にゆっくりした時間の中で夢やら目標やらが定まらないまま過ごしていた。

 
 今よりも情報取得方法が少ない時代。パソコンや携帯どころか、PHSすらまだ一般的には普及しておらず、ポケベルが普及し始めた丁度16~17歳位の時期。通っていた高校は、いくつかの工業クラスが存在することで男の比率が圧倒的に多く、その男だらけの環境では日々「車やバイク、流行やスポーツ(部活動)の話題」が多かったように思えた。しかし、あのころは「話題」に参加したりするものの私自身内容には全く興味が無い。「車は人が走るより速ければ何でもいいや」とも思っていたし、「服は安くて、それなりに見えればそれでいい」とも思っていた。何より1日が早く終わればそれで良かった。
 
 何も考えず悠々と過ごし、お金なんて全く必要としなかったそんな私も周囲の待ちこんだ流行とファッションに可も無く不可も無く賛同した。当時は、現在でいう所のヴィンテージブーム真っ盛り。どの雑誌にも「デニムが、ヴィンテージが」といった内容で否応なしに情報が飛び込んでくる。それでも、それ程の反応はしていなかったと思うが…

 

 

 ある日、ふと授業中に友人から借りて呼んだ雑誌の一部に「最古のジーンズ発掘!!」めいた内容に目を止めた。それまでは、「面倒だから…」と雑誌の写真ばかり眺めていたが、その写真と内容が実に印象的であったのだ。とりあえず「ふーん」でその場を済ましたが、大手ジーンズ縫製工場が近場にあったことでデニムパンツ「ジーンズ」がそこら(当時は近所の本屋にも置かれていた)に置かれていた状況が見え始めるきっかけになり、当時の私の呼び方で「ジーパン」が面白いと感じ始めるきっかけにも成り得た。
 

 そう、強いて言うなら17歳のこのあたりが全ての入口となるだろうか。