深海2017-DEEP OCEAN- 雑記 | Nature | Photography | Music | Art

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上野で始まった表題の展示会に行ってまいりました。

 


今月も後半になると小さな人達でごった返すだろうと思い、最も人の少なそうな開催早々の平日午前を狙う。

数年前に開催された前回の深海展はダイオウイカに終始した感があったが、今回の展示の方が見所が分散して落ち着きがあってよかったような気がする。
展示内容も個人的に大好物の発光生物を大々的に取り上げてくれたのがポイントが高い。




今回ひそかに期待していたのが発光生物用に新規開発したという4K超高感度カメラの現物が展示されないかというものだったのだが、それはさすがに無理だった。解説も目新しい情報はない。かなり興味があったのだが残念。




ハウジングは展示されていたが、中は入っていない。




その他の展示物について個人的な感想などを並べるつもりはないのだが、ひとつだけ他の方々が書かないであろう展示物について興味を持ったので備忘録ついでに書いておこうかと。少々専門的になりますが。

それは生物とかではなくこんなもの。




これ、何かというと深海探査機の外部に付属している照明器具。前回の展示会にもあったかも知れないが見落としていた。


日頃海中で撮影している手前、水中照明の機材に関しては人一倍関心がある。

科学の最先端機器かと思いきや、かなり原始的な作りをしているのが意外。

ダイオウイカ撮影時に使用したのもこのタイプなのかどうかは不明だが、メインの白色LEDと海生生物からは不可視(とされている)な赤色LEDが交互に並んでいてそれぞれを切り替えられるようになっている。

見る限りはありふれた民生用の高輝度LEDのよう。例えば秋月電子でも売っているこのあたりの1W程度のものだと思われる。


http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-03042/

これ以上高輝度になると冷たい深海であっても放熱が厳しくなるのでこの程度で抑えているのかも。

基板のシルクには14.8Vと書いてあるのでコネクタ部分から4セルLiPoバッテリーで駆動するよう。


裏側には高電力用のセメント抵抗と酸化金属皮膜抵抗が各列についている。それぞれ白用・赤用?

 


この電圧と抵抗値から推測すると各列のLEDは直列接続され、白色が5行4列、赤色が4行4列。おそらく一個当たり100ルーメン程度だと思われるので白色で2000ルーメン程度? 探査機には左右に1基づつ付いていたのでその2倍。

上の予想が正しいとなると、ダイビング用の業務用ビデオライトと比べるとかなり暗い。深海で光が少ない場所なのでこの程度の明るさで十分なのだろうか。

すべてのLEDは平面実装されているので、ディフューザなしだと照射角はおそらく広くても120度ほど。

ご存知の通り深海だと猛烈な水圧との闘いになるので、機材を格納するハウジングは分厚く大仰になってしまう。
照明器具だと更に透明性を保ちながら耐圧にしなければならないのでさぞや大変だろう…と思いきや、簡単な発想転換でこれを乗り切っているのが面白かった。
つまり上の写真の通りハウジングではなく機材をそのままレジンで固めてしまう。そうなると空気が入る部分がないのでそもそも圧力差が発生しない。
中の機材はおそらく数千円程度なので、メンテナンス不可で使い捨てになってしまうがコストは断然安くなる。

日頃いろいろ水中にガラクタを持ち込んでいてそれらの防水対策にいつも苦心している手前、いいヒントをもらったような気がする。