前回割愛した部分で、今回の三陸海岸探索で一番時間をかけた場所です。
鵜の巣断崖…どんな岩手のガイドブックにも載っているだろうし、風景写真誌のお勧めスポットにも頻繁に取り上げられる場所。
駐車場から10分ほど歩いて展望台に立ってシャッターを押すだけでこんな壮大な風景が撮れるわけです。
逆に言うと船でアプローチするかドローンを使わない限りこのアングルの写真しか撮れないわけで、どうもそれだけでは満足できない性分で…
もっと他の切り口がないだろうか? もっとこの断崖を楽しむすべはないか? そう考えて更に周囲を探索してみた。
途中で少々危なげな場所を通る必要があるため場所は伏せておくが、こんな所を見つけた。
一本の木が邪魔をするので風景写真的にはつらいが、断崖の全貌をより前方から見ることができる。
その他のアプローチも探索してみたところ、更にマップをよく見てみると展望台と断崖の間に位置する海岸に降りられる林道が延びているようで、より断崖を近くで見られそう。車で突っ込んでみた。
林道はすぐに砂利道となり、そのまま4kmほど進まなければならない。
途中三陸鉄道と交差する。断崖の中の地中を鉄道が走っていたとは…
海岸が見えてきた。
もともとは何か建造物があったのだろうが、今は瓦礫と流木のみの海岸。
折からの強風で海は大荒れだが、断崖を下から見たらどう写るのかを見たかったので海岸線に近づいてみた…すると。
隧道? 断崖の真下に??
高波を被っているためこれ以上近づくのは不可能。
更に海岸を散策してみるとこんな道標を発見。
「みちのく潮風トレイル」、知らなかったのでググってみるとすごいことが判明した。
http://www.env.go.jp/jishin/park-sanriku/trail/
なんとこれ、青森の八戸から福島の相馬に至る総延長700kmに及ぶ海岸線を巡る壮大なロングトレイル計画であること、昨日歩いた黒崎~北山崎間にあった遊歩道もこの一部であること、ひいては東北地方の太平洋岸の散策路を網羅していること、更にはこのトレイルを完歩した人々がいて情報を上げてくれていること等々。
もしこの情報を事前に知っていれば今回の探索の効率も格段に上がっていたのに…と少々悔しがる。
展望台に戻ってよく探してみると、先ほどの隧道の情報もあった。
なんと、通行困難箇所があるものの幾つかの隧道を経て鵜の巣断崖の下の海岸を徒歩で通行できるみたい。 つまり鵜の巣断崖を下から眺めながら歩くことができるということ。
これは是非とも歩いてみたいが、Web上にも詳しい情報、特に震災後の状況の詳細はざっと見た限りでは見つからなかった。
そこで、波が高くない日の干潮時に改めて突入してみることにした。行けるだけ行って通行が無理そうなら帰ってくればいい。
注. 結果から言うとこのコースは非常に危険。三点支持など基本的な登山の技能、不安定な浮石・滑り石や流木などを判断/対処できる磯歩きの技能、高波に流された時にリカバリできる技能は必須。崖上からの落石を常に気にかけながら、海況平穏な干潮時限定。潮が満ちている時、海が荒れている時はまず無理。
そしてトライの日、風は強いものの沖出しの風。この方向の風はかえって波の発生を抑えてくれるので好都合。干潮の時間を狙う。
まず下見として、先ほどのマル秘スポットに行って600mmレンズを使って全行程のチェックを。
遠目で見る限りは通行困難な場所は見受けられない。強いて言えばゴロタが続いている箇所と海岸が狭くなっている箇所くらいか。
いざというときのために山と海の双方の装備を持って、まずは展望台駐車場の横から冒険は始まる。
先日の海岸(真木沢海岸というらしい)までは非常に整備された快適な山道で危険箇所はなし。
先日は大荒れだったが、本日の波は皆無に近い。やはり沖出し風が波を抑えてくれているようだ。これなら仮に波にさらわれてもなんとかなりそう。
さて、昨日高波のため遠くからしか見られなかった真木沢隧道に近づいてみる。
穴は塞がってなさそう。入ってみる。
すると内部はいきなりこれ。
もともと作ってないのか、津波で破壊されたのか定かではないが乗り越えるのはたやすい。
なかなかフォトジェニックな隧道。
隧道出口の地形。
狭い海岸。次の隧道が見えている。
鵜の巣を見上げる図。目も眩むような断崖。地震がきたらひとたまりもなさそう。
さて、次のながおり隧道に入ってみる。内部は流木だらけだが、注意して進めば問題なさそう。
ながおり隧道は次のみひき隧道にほぼ連続している。
みひき隧道内部。何の問題もなし。 撮影忘れ。
みひき隧道出口。ここは少々高低差がある。三点支持遵守で慎重に下りる。
次の海岸は落石の嵐。結果的に一番緊張したのはここだった。
最近と思われるような落石もあった。足元も悪く、浮石に注意しながらなるべく早急に通り過ぎる。
とはいえ、上を見ると絶景なのだが。
さて、次のにごり隧道だが、穴が二つ開いているが、左側が正解。右はただの窪み。
にごり隧道内部。びっくり、胸くらいの高さの大岩が行く手を塞いでいる。津波の威力恐るべし。乗り越えて進む。
にごり隧道その後は問題ない。
出口の高低差はかなりある。三点支持で慎重に。
その後、かなり広い海岸が続く。
見上げると相変わらず絶景の連続。
最後のにわが隧道。全く問題なし。
さて、ここからが海岸侵食で通行困難と記されていた箇所になる。
当面は何の問題もなさそうだが、確かに干潮時以外の通行は危険だと思われる。
ここが震災前から一番難所とされている一番狭い部分だが、干潮なのであっけなく通過。
美しい滝発見。
少々厄介な流木とゴロタの地帯。足場がかなり不安定だが、慎重に乗り越える。
もう一箇所狭路。
さて、最後の海岸。ゴールの車道が見えてきた。
ゴール。
展望台から見ると風光明媚な鵜の巣断崖だが、あまり知られていない反対側のエンドはこんな感じ。
まだ津波の爪あとが濃厚です。
ちなみに、この後車道と林道を通って展望台まで徒歩で戻ったのですが、大回りをするため2時間程度、しかも高低差もかなりあり帰路の方が体力を必要とします。