(無言) -3ページ目
どろどろした
澱んで埃の浮いた液体が
わたしの腹の中に溜まっている
溜まっていく
醜い
醜い
見たくない

わたしの
わたしの中は空っぽで
冷たい風が吹いていて
体中の傷口にしみる
自作自演の
必要のない傷
見なければいいのに
中を覗いては
傷を増やす
くだらない
誰のせいでもなくて
ひたすら
いらない傷 増やす

馬鹿みたいな
会いたかった
君に会いたかった
新しくなったわたしを
一番初めに見てほしかった
わたしの新しい一日を
一緒に迎えてほしかった
何をするでもなく
一緒に眠ってほしかった
君と
一緒に朝が来るのを待ちたかった
君と
他でもない君と
きみの目に映っている
ぼくのかおは美しいだろうか

きみの手に触れている
ぼくのからだは美しいだろうか

きみにとってぼくは
果たして美しさを見出す対象であるのだろうか

きみは
きみの生きざまに依って数え切れぬ程の
多くの、あらゆるものと交わって来ただろう
ぼくはその多くのひとつに数えられているだろうか
ぼくは、
きみの存在に少しでも混じり合うことが出来るだろうか
眠っている君を見ている
見ているだけ
わたしはただ見ているだけ
眠っている君を

眠っている君を見ている以外に
わたしに何が出来るっていうんだろう
わたしは何がしたいっていうんだろう
眠っている君を見ている以外に
望むことがあるだろうか

わたしは眠っている君を
ただ見ているだけ
愛しているのでもなく
憎んでいるのでもなくて
わたしはただ眠っている君を
誰よりも近くで見ているだけ

君に心臓を食われてしまった
かわいそうなわたし
君を見ていることしか出来ないので
君を見ていることに満足する
そうしてつまらないことに価値を見出して
大事に抱えていることで自分を補っている
くだらない感傷だと分かっていてもそうすることでしか
そうすることでしか、認めることができない
愛されていない
わたしは愛されていない
愛する対象としての存在ではないのにどうして
ただ愛されることだけ、渇望しているのか
不毛なことをしている
じゅうぶん過ぎるほど分かっている
わたしは愛されない 愛さないから