私の大切なひとは
とても楽しそうに
わらうひとだった

棺の中眠っている
そのひとの身体は
青白く黙っていた


いまどこにいるの
何を感じているの
涙をこらえて歩く

帰りみちはずっと
光が雪に反射して
眩しく輝いていた


それが悲しかった
けれどいま思うと
あの時の眩しさは

大切なひとの魂が
いま楽しいよって
わらっていたのだ



ーーー

“雪の世界の美しさは、
地上のあらゆるものを
白いベールで包みこむ不思議さ
かもしれない。

人の一生の中で、
歳月もまた
雪のように降り積もり、
辛い記憶をうっすらと覆いながら、
過ぎ去った昔を懐かしさへと
美しく浄化させてゆく。

もしそうでなければ、
老いてゆくのは
何と苦しいことだろう。”


星野道夫