私の大切なひとは
とても楽しそうに
わらうひとだった
棺の中眠っている
そのひとの身体は
青白く黙っていた
*
いまどこにいるの
何を感じているの
涙をこらえて歩く
帰りみちはずっと
光が雪に反射して
眩しく輝いていた
*
それが悲しかった
けれどいま思うと
あの時の眩しさは
大切なひとの魂が
いま楽しいよって
わらっていたのだ
ーーー
“雪の世界の美しさは、
地上のあらゆるものを
白いベールで包みこむ不思議さ
かもしれない。
人の一生の中で、
歳月もまた
雪のように降り積もり、
辛い記憶をうっすらと覆いながら、
過ぎ去った昔を懐かしさへと
美しく浄化させてゆく。
もしそうでなければ、
老いてゆくのは
何と苦しいことだろう。”
星野道夫