フジテレビ系の「報道2001」を見ていたら石原慎太郎氏と藤原正彦氏の対談が放映されていた。
日本人が弱体化している点というのは自分の反省も含めて痛切に感じます。
この中で、藤原氏が「世界各国は通貨を市場にどんどん供給しているのも拘わらず、日本はそれをやっていない。非常時はやるべきことがあるのでそれをやるべきだ」というような主張をされていました。
確かに日本からの輸出で成り立っている製造業は為替のために製品価格が上昇してしまい、競争力が落ちてしまうというデメリットがあります。そう考えると日本も通貨安競争に加わった方がいいと考えるでしょう。
しかし、通貨安競争に加わらないメリットもあります。
世界的な資源の量がさほど増えない中で、世界でガンガン通貨の供給量を増やせば、通貨の価値が資源(石油、食料、水など)の価値に比べて相対的に低くなります。
資源価格の上昇は余剰となったカネが取引市場に流れていることが原因のひとつでしょう。
それはインフレであって、行き着くところまで行けば貨幣経済の破綻の可能性すらあり得ます。つまり通貨の価値が限りなくゼロに近くなり、いくら金を積んでもモノが買えないという状態です。
イマイチわかりにくい今回の円高ですが、長期にわたりゼロ金利でもう金融緩和のしようがない(やるとしたら中央銀行の国債引き受け=ハイパーインフレ政策)日本を尻目に世界がどんどん金融緩和に走っているという状態でしょうか。
円高は一つの現象ですけど、それには理由があるわけです。
「円」が世界から相対的に信任を受けているということですが、財政がひどいなんてもんじゃないくらいに荒れている日本がそれでも信任を受けているということは、やはり安易な通貨安競争に走っていないという点が評価されているのかも知れません。
「円」が信任されているということは海外からものを買うには有利な状態です。
世界的な石油、食料の値上がりに比べて、日本の値上がりが比較的マイルドなのは円高のメリットです。
長期的にこの状態が進めば世界中がインフレに苦しむ中、日本は比較的恵まれた環境になるかも知れません。
ですから、長期的視点も必要だと思うんですね。
ただ、国家財政が破綻すれば全ての潮目が変わってしまいますから、安閑としていられないのは確かでしょう。