多くの人々は、戦争、テロリストによる攻撃、自然災害といった集団で受ける大きなショックの後に、物理的にも精神的にも方向性を失ってしまう。その状態を利用して、経済的なショック療法を用いて、人々をコントロールする。

 

これが「ショック・ドクトリン」です。

 

2011年に出版された著書『ショック・ドクトリン』では、アメリカが様々な自然災害、危機や惨事を利用して世界中の人々や世界各国にショックを与えることで、「自由市場」志向政策をどのように世界に拡大させて、支配的な政策にしていったかが赤裸々に綴られています。

 

また、ショック・ドクトリンは、「念願だった政策をどさくさに紛れて一気に遂行する」政治手法として、世界中で活用されていることも指摘しています。

 

 

 

本書にもあるように、これは世界中で行われていることであり、政治手法としては一般的なようです。日本でも、国家債務の膨張を一気に解消すべく、この手法の実行を虎視眈々と狙っている可能性を感じています。

 

日本にとって念願の政策とは何か。

膨れ上がった国家債務を一旦リセットすることではないでしょうか。つまり、「何らかのショックが生じたときに、どさくさ紛れにインフレを起こし、国家債務を一気に帳消しにして財政再建を果たす」ということが考えられます。

 

では、そのタイミングとは。

それぞれが30年以内に70%以上の確率で発生するとされている、南海トラフ地震と首都直下型地震が最大の候補といったところでしょうか。

 

これらが発生した時の被害想定は、南海トラフ地震が220兆円、首都直下地震は100兆円

とされています。

 

不幸にもこのような事態が発生してしまった時には、今の財政構造では平時対応の復興予算では賄いきれません。そのため、平時では禁じ手とされている財政ファイナンス(日銀による日本国債の直接引き受け)によって、資金調達する可能性が高いと考えられます。

 

 

なぜ、財政ファイナンスが禁じ手とされているか。

それは、貨幣の発行量が激増することを通して、ハイパーインフレをもたらしてきた事実が世界中に見られるからです。

 

しかし、極めて巨大な災害の前では、国民は思考停止してしまい、茫然とこれを受け入れてしまうことになるでしょう。そして、誰が責められることも、誰が責任を取ることもなく、国家がうず高く積み上げてきた債務の山をたちどころに消してしまうことができます。これぞ、まさしく「ショックドクトリン」です。

 

 

実際には、政策実行のきっかけに他のイベントが活用される可能性もあるでしょう。

 

 

現在の国家債務を増税や歳出削減でコツコツと返済していくことは、金額的にも不可能です。また、極端な増税や歳出削減を訴える候補者は選挙で当選できない、という民主主義のプロセス的にも不可能と思われます。である以上、何らかの「ショックドクトリン的発想」で強行せざるを得ないのではないでしょうか。