『あなたが二十歳になるまでこの世界は存続しない。だからあなたはこの世界では結婚もしないし、勉強もしなくてもいい。この世界がハルマゲドンで滅びても、神に救われて生き残って楽園に行けるように、今は神に仕えることだけを考えて行動しなさい。』


そんな悪い冗談みたいなことを、ものごころついた時からひたすら言い聞かされて育ったら。


信じられないようなことを信じて育つ子どもがいる。


少なくとも、私はそうだった。


“二十歳まで“,”二十歳まで“...


自分の中でも、二十歳までの人生設計しか考えていなかった。学校で将来の夢なんかを聞かれても、本気で首を傾げたものだった。当然の如く、中学では部活など入らない、入りたいという希望を持つことすら許されなかったし、むしろ部活は、宗教活動を妨げるサタンの罠の一つとして避けるべきもの、と教えられていた。


高校も、通信制を選ぶのが当然のような雰囲気で、長老家の子どもとして普通の選択肢だと、周りにも思われていた。


選択肢など、何一つ存在しなかった。


するべきか、するべきでないか、ただそれだけ。


好きか嫌いかはもちろんのこと、やりたいかやりたくないか、できるかできないか、などという選択肢は、私たちの前に用意されたことはなかった。


しかもそれは、信仰の度合いとして評価され、自ら喜んでその道を進むことしか、許される余地はなかった。