ーーーーー疑いーーーーーーーーーーー

手に取った携帯の画面解除をした私は通話記録からリダイヤルでかけようとしたその手を止めた。

頭の中に一つの疑問が浮かんだからだ。

そもそも本当に楽天銀行からだったのだろうか?

新手の詐欺ではないのか??

だとすれば

マズい

個人情報を話してしまった。

ただ、カード番号やパスワードを漏らした記憶がないので、大丈夫だろうと思いながら少し不安になる。

私はリダイヤルで掛け直すのをやめ、デスクに置いてあったパソコンで楽天銀行の問い合わせ先を検索してみた。

いくつかの連絡先が記してあるのでかけてみる。

0120から始まるフリーダイヤルは携帯からでは使用できないらしく、0570から始まる有料番号へかけないとどうやらダメらしい。

30秒10円くらい取られる。なかなか高額。

あんまりかけて来ないで!が本音なのだろう。

 

電話をかけるとナビダイヤルで案内されるのだが、カード紛失でもなければ口座開設でもない。

面倒なので何となく人に繋がりそうな番号を選び適当に数字を選んでいく。

進んでいくと、このままお待ちになるか、しばらく経ってからおかけ直しくださいのガイダンスが流れる。

かけ直したところで、ここまでの工程が簡略化されるわけではないのでこのまま待つことを私は選択した。

この時間もお金は取られるのだろうが仕方がない。

平日の夕方ということもあってか、待ち時間が長いと感じることもなかった。

 

『お待たせしました』

電話口に出たのは男性であった。

私は楽天銀行から電話があったこと、会話の内容を彼に伝えた。

私の用件を理解してくれた彼は

『担当部署の営業時間は終わっているので明日以降にこちらかお電話差し上げましょうか?』

と答えてくれた。

なるほど、どうりで先にかけてきた女性はキレ気味で早く切りたいオーラが出ていたわけだ。

私は明日が土曜日だが営業しているのか確認したのちに、

明日の午前中に掛けてきてもらうよう伝えて電話を切った。

 

どうやら詐欺ではないようだ。

だが電話を切った私はまだ苛立ちを抑えられずにいた。

どう考えても納得できるはずもない。

私はただ銀行にお金を預けているだけである。

怒りと呆れが入り乱れた不思議な感情の中、ガイダンスに流れていた一つの部署を思い出した。

振り込み詐欺などの被害に遭われた方達の部署があったはず。

ここに尋ねてみれば何かわかるかもしれない。

私は再び電話をかけた。

ガイダンスに従い進んでいくとそれらしき部署にたどり着いた。

電話口は女性の声である。

私は逆にそちらから疑われいて、取引制限をかけるかもしれないと言われているのですがそんなことあるのですか?

私の問いに彼女はあくまでも可能性とし、明日、担当の者から折り返させましょうか?と提案してきたが、私は明日の午前中にお電話をいただくことになってます。と切り返した。

彼女は自身のパソコンからでも調べ、確認したのだろう

『確かに御伝言承っておりますね、明日、午前中に係のものから携帯にご連絡させていただきます』

とのことだったのでお願いしますと伝え私は電話を切った。

 

こうしてこれまでの人生で、過去最高に怒りのバロメーターが上がった最悪の金曜日が終わった。

2020年4月3日金曜日の出来事である。