固形の石けんや石けんシャンプー、石けん歯みがきは「石けん素地」という原料から作られています。
石けん素地とは、植物油などの油脂と水酸化ナトリウムを混ぜて反応させたものです。
この油脂の種類によって、使い心地や泡立ちが変わります。
油脂に使われるのはオリーブオイルやヤシ油、パーム油、牛脂、などがあり、泡立ちがいいのはヤシ油です。
(このブログでは石けん素地に使われる油脂は植物油のみのものを紹介しています。)
水酸化ナトリウムは苛性ソーダとも呼ばれ、1791年フランスのルブランが合成で炭酸ナトリウムを作り出し、それを利用して水酸化ナトリウムも作られるようになり、石けん作りに応用されるようになりました。
油脂と苛性ソーダが反応すると、副産物として「グリセリン」ができます。
グリセリンをそのまま一緒に固めると保湿作用が高いのですが、溶けやすい(くずれやすい)という欠点があります。
塩を加えてグリセリンを取り除いたものが、通常は使われています。
19世紀になると、海水を電気分解して苛性ソーダを作り出す製造法が開発され、それからは油脂と反応させて、より簡単に石けんが作られるようになりました。
また、水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)のかわりに水酸化カリウム(苛性カリ)を使うと、液体状の石けんシャンプーやボディソープになります
石けんの歴史は長く、紀元前3000年のメソポタミア文明の頃、石けんの製造法がすでに粘土板に記されてありました。
紀元前800年の古代ローマ時代、生贄の羊の油と木灰が混じったものを流した川でものを洗うと汚れが落ちることから、石けんが発見されました。 ※諸説あり
(これは油脂とアルカリが反応して石けんができたのです。)
その後、1300年になって、マルセイユでオリーブオイルを使った固形石けんが作られ、スペインではカスティーユ石けんが作られます。
日本には南蛮貿易により、1500年半ばから1600年初期にかけて入ってきましたが、輸入が開始されたのは1859年の安政開港からです。
1872年に国内ではじめて国が石けんを作り、1873年には民間の会社が作り始めました。
だいぶ、遠回りをしてしまいましたが「石けんかす」の話です
オーガニックコスメでは乳化剤としても使われている石けんですが、石けんシャンプーや石けん歯みがきを使っていて、必ず起きる現象があります。
それは水道水と混ざると水道水のマグネシウムと反応して白く固まることです。
たとえば、シャンプーのときに頭の上で固まるということはありませんが、流したあと排水溝に白く石けんかすが残るのです。
お風呂から出る前に排水溝を流さないと、排水溝で固まることもしばしばあります。
合成シャンプーや合成のボディソープにはこういうことは起きませんが、この石けんかすは排水として川に流れたとしても、生物には影響がないのです
ここが大きな違いで、石けんベースのものを使うと環境保護にもつながる、というのはこういう理由もあるのです。
少し手間ですが、最後に排水溝を流すことも慣れると習慣になります。
石けんや石けん素地についてネットをみると、石けんは化学物質であり、界面活性剤で危険なのだー!という、消費者の不安を無駄に煽るような文章が多くあります。
びっくりです
確かに、石けんは界面活性剤なのですが、「合成」はつきません。化学反応を起こすので、化学物質なのでしょうか。
界面活性剤とは「乳化」と「洗浄」の働きがあります。
マヨネーズをつくるときに油と卵をまぜますが、このときに乳化の役割をしているのが「レシチン」です。
「乳化」は混ざらないものを混ぜ合わせるということです。
「界面活性剤」の界面とは混じり合わない堺を界面とよびます。
化粧品では水や油など混ざり合わないものを混ぜる時、また洗浄するときに使います。
石油系コスメでは、「合成界面活性剤」と呼ばれる石油で作られた成分が使われますが、肌の奥まで浸透したり、皮膚のたんぱく質を変性させてしまったり、強い作用があります。
この合成界面活性剤は「洗浄」目的で、食器用洗剤にも使われ、手荒れやアレルギーを引き起こすこともあります。
メイクがひと拭きで落ちる、というクレンジングにも強い合成界面活性剤が使われているので、肌が弱い人は注意です。
乾燥や敏感肌になりやすくなります。
生活排水が直接、川や海に流れている自治体もまだあります。
石油系合成成分は環境にも大きなダメージを与え、生物が死んでしまったり、水を浄化する微生物や植物が生育しなくなるという問題を引き起こします。
また、石油系の合成成分は分解性が悪いので、長く環境中に残ってしまいます。
生物たちに影響があるだけではなく、最後は人に還ってきます。
なかなか見えづらいところですが、自分にも環境にも問題のないものを使いたいものです