<第320話> 第7章 大学院受験編Ⅰ ~新しいエピローグ(5)~
「うーす。」
「おいす。」
講義を終えて学食へやってきた僕は、
いつもの席へと向かった。
そこにはサークルの同期や後輩たちが何人か先に来ていて、
めいめいに食事をしていた。
「今年こそはって思ってたんだけどなぁ。。」
と、隣でへこんでいるのは同期の橋本だ。
彼は、一年の冬のテストで英語の単位を落とし、
この前の二年の終わりに受けた追試でもさらに落としてしまったという悲劇に見舞われていた(勉強不足だな(ぇ
「まじで勘弁してほしい。。卒業までにとれるんかなぁ、俺(涙」
橋本はどうにもうさんくさい眼鏡をかけたおぼっちゃんタイプだ。
見た目はどこからどうみても優等生なのだが、
いかんせん、勉強は苦手らしい。
浪人時代がよほどつらかったのか、
もう勉強はまっぴらだというのが彼の口癖である。
「あ、そういえば、神谷ぁ。」
そんな橋本が僕に声をかけてきた。
「んぐ。なんだよ。」
もぐもぐと口を動かしながら、
昼の定食をほおばる。
僕の食べるスピードや咀嚼のタイミングなどお構いなしに、
橋本は続けた(こいつは空気を読まない(;´Д`)
「朝、お前のこと聞いてきたおっさんがいたけど、会えた??」
あー。
こいつが僕のことを伝えたわけかw
どうやら、今朝会った櫻井という刑事は、
聞き込みの過程で橋本に遭遇したのだろう。
運がいいというか、勘がいいというか。
さすが刑事の嗅覚である。
そして、不審に思うことすらなかった彼は、
素直に僕の居所を教えたようだ。
「あ、携帯の番号も伝えといたんだけど、電話かかってきた?」
おいおい。。
人の携帯番号を他人に教える奴がいるかぁ(;´Д`)
「いや、直接会えたよ。」
どちらにせよ櫻井刑事にはもう携帯の番号は教えてある。
直接かけてこなかったこと、
改めて僕に携帯番号を尋ねたところをみると、
あの刑事は常識がある人なのかもしれない。
といっても、どういうことが常識なのかはいまいちわからないがw
「知り合い?」
「いや。」
「誰?」
「けーさつ。」
プライバシーという言葉と無縁な橋本との
食事をしながらの短い単語のやりとりが続いたわけだが、
警察、との言葉で、橋本の太めの眉がぴくりとあがった。
「ん? 神谷なんかしたの?」
まぁ、そうなるよなw
「いや、人探しだってさ。 ほら、学部の奥野っているじゃん。あいつのことで・・。」
橋本と僕はお互い法学部なので、
奥野のことを彼も知っていると思った。
そのときだった。
「奥野・・・? 奥野が、いなくなったのか??」
僕の目の前で、
橋本が、目を見開いて固まったのだった。
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