『オズの魔法使』や『イースター・バレード』、『スタア誕生』などの名作に出演し、素晴らしい演技を見せてくれたジュディ・ガーランド。47歳の若さで亡くなっている。彼女の晩年と、並行してデビュー間もない頃の姿が描かれる。

 

大人たちは何も知らない少女を言葉巧みにその気にさせる。スターになる夢を見させ、言うことを聞かないと圧力をかけ、有無を言わせない。意を決しての抵抗も、結局謝る羽目に陥る。制止を振り切り、禁止されたハンバーガーに食らいついたり、プールに飛び込んだりするのが精一杯。ささやかな抗議なのだが、結果大人たちの怒りを買うばかりだ。売れっ子になると睡眠時間も削られ、散々働かされる。稼げるうちにできるだけ稼がせる。消耗品のようで、気の毒でならない。輝かしい子役の活躍の裏には、かくも残酷物語が隠されている。

 

ジュディはダイエットのために食事制限させられ、睡眠不足を補うために、薬を飲まされる。何の錠剤なのだろうか。詳しい説明はないが、ダイエット薬とか栄養剤なのだろう。子供時代から薬漬けで、身体にいい訳がない。多分そのせいで、ジュディは心も体も蝕まれてしまった。遅刻したり、現場に現れなかったりしたのも、無理もないように思える。薬物依存症にしたのは、当時の大人の関係者たちだ。晩年、ロンドンでのステージに上がるのを渋ったり、歌えないと居直ったりするのだが、こんな事実を知っていたなら、彼女を責めることはできまい。それでもいざ歌いだすと、素晴らしい歌唱で観客を魅了してしまうから凄い。

 

演じるレネー・ゼルウィガーが素晴らしい。言われなければ、彼女とは分からなかったかもしれない。垂れたイメージの強い目の周りを、濃いメイクで完全カバー。笑うとどうしても地の雰囲気が出てしまうが、なり切り演技はお見事。そして何よりも吹き替えなしの歌唱が完璧で、感動させられた。特にラスト二曲は鳥肌もの。そう、終わりはこの曲で締めなければならない。歌詞の意味するところも、じっくりと噛みしめたい。名曲中の名曲だが、彼女の苦悩を思うと感慨もひとしお。精一杯のパフォーマンスを見せたジュディ。そして、それに応える観客たちとの一体感が泣かせる。彼女の古くからのファンの、ゲイ・カップルとのやりとりも感動もの。これが本当の彼女の姿。スターとして、ファンの心の中には、いつまでもジュディは輝き続けている。虹の彼方で…。