巧い役者はコメディをやらせても巧い。父役の堤真一始め、ちょい役の妻夫木聡まで本当にお見事。広瀬すずは今回初コメディとなるが、奮闘してくれている。憎まれ口を叩いても、とてもキュートなデスメタルバンドのボーカルだ。バラード・ナンバーもなかなかに聴かせてくれるので、驚いた。更にパンチ・キック力も、パワーが感じられた。父を臭く感じて、いちいち消臭剤を噴射する繰り返しも、うるさくはない。

 

監督の浜崎慎治は「三太郎」他のCMディレクター、脚本の澤本嘉光は「白戸家」他のCMプランナー。au+ソフトバンクという、ヒットメイカー奇跡のマッチング。この二人の下に豪華なキャストが集結して、実に賑やか。キャラもみんな立っているので、観ていて分かり易く感情移入もし易い。親父大嫌いなヘビメタ娘・七瀬(広瀬)、娘に口うるさい父・計()、存在感の薄いゴースト社員・松岡(吉沢亮)、あの世への案内人・火野(リリー・フランキー)。立体映像の木村多江がやたら明るいのが、不在を強調するようで、かえってもの悲しくもある。そのセリフにも意味があろうとは…、やられた。松田翔太の年寄りじみた動きもいい。

 

二日間だけ死ねる薬という発想が面白く、それで何をやるのかといえば、裏切り者をあぶり出す作戦というのもユニーク。主人公側と悪玉側の攻防も、笑わせながら楽しませてくれる。静電気、藤井さん、計の特技、元素記号など、数えきれないほどの伏線が見事に回収される脚本は、本当にすっきり気持ちいい。そしてJAXAのあの人が顔を見せる理由とは…!?これぞコメディ。

 

演出については、終盤テンポがよすぎて、やや端折り感は否めない。笑って、笑って、笑って、妻の死に目に間に合わなかった理由に、ちょいホロリ。そして、父と娘の関係性を見つめ直す展開がいい。愛と憎しみは紙一重。その表現方法が、お互い不器用なだけなのだ。そして、口に出して言わなければ、分からないことはままある。ラブロマンスはとってつけたような感じなので、エンドロール後のラスト・カットはなくてもいい。これは父と娘の和解、いや理解の物語なのだから…。