このシャトレーンには790米ドルの値段が付いていた。

送料は無料。

 

この出品者さまのお店の商品はよその店より質が高く、

そのぶんお値段も割高である。送料もしっかり取るが、

その分発送が早く、しかも包装が大変芸術的で美しい。

満足度の非常に高いお店である。

 

だから、この商品に限って送料無料というのは少々驚きではあった。

しかもシルバー製のシャトレーンでこれだけしっかり揃って

このお値段なら、きっとミニサイズなのだろうな、と思っていた。

しかし実際に届いたのは、予想よりはるかに巨大なものであった。

 

瑕疵らしい瑕疵は全くない。

19世紀のものなので、それ相応に経年変化はしているが、

それにしては素晴らしくいい状態のものである。

普通に考えれば、1,500〜1,700米ドルはする商品だし、

あの出品者さまなら当然そういう値段を付けるはずなのだが。

 

ちなみにこの内側の金色はK18のメッキである。

 

 

うーむ。

破格の値段を付けて、送料無料にしてでも、手放したかったのだろうか。

 

長い間在庫として抱えて、抱えきれなくなったとか。

いや、あのお店にはもっと長く在庫となっているものはたくさんある。

そもそもアンティークというのはそういうものである。

 

もしや、いわく付き!?

 

持っていると不幸になるとか、良くないことが起きるとか。

 

19世紀に造られ、2度の戦争を生き延びたものなら、

そんな背後がひとつやふたつ、あってもおかしくないかもしれない。

 

よく不動産では「事故物件」などと呼ばれるものがあって、

いわく付きの物件は格安のお値段で放出されてたりするけれど。

 

事故、事件、自殺、他殺、孤独死、そんなものが事故物件に

なるなら、およそアンティークのほとんどが事故物件だ。

 

 

あるいはもしや、わたしは実は多重人格者で、ジキルとハイドのように

わたしの知らないところでもう1人のわたしがしゃしゃり出てくる、

もう1人のわたしがスマホ画面を操作し、まんまとお買い上げして

くれたりしたのだろうか。

 

 

あるいは、このシャトレーンはもしや、

 

わたしのところに来たかったのだろうか?

 

それでわたしの思考を乗っ取って、親指を操作したのだろうか?

 

 

長く生きていると、不可思議な出来事にたまに出会うものだ。

今までにも、神がかりか、神通力か、そういう高次的な力が

働いたとしか思えない出来事が、何度かあった。

 

あれはもう3年も前のことになるが。

 

長くなるので、つづく。