1977年リリース。
何年振りだろう、本盤を手にしたのは。
佐藤奈々子について、俺は1990年代前半にのめり込むように聴いていた。
彼女のウィスパリングヴォイス、コケティッシュな雰囲気、バックの豪華さもあり、俺は彼女に夢中になっていたんだ。
渋谷系が流行っていた頃、ピチカートだフリッパーズだのを聴く人は周りにたくさんいたが、そのルーツたる佐藤奈々子を聴いている人は誰もいなかった。
それもあって、少し意地になって聴いていた、という側面もある。
出会いは1989年。
御茶ノ水の中古レコード屋。
セカンドアルバムのスウィート・スウィンギンが棚の一番上に出ていて、そのジャケットにヤラれて視聴もせずにレジに並んだ。
1500円だった。
聴いてみたら驚いた。
日本人でこんなにキュートにウィスパリングヴォイスで歌う歌手を俺は知らなかったから。
佐藤奈々子を聴かなくなったのは、師匠が彼女を知っていたから。
『あら、あなた随分と分かりやすいもの聴くのね。 私も前は聴いてたのよ』
ちょっと調子に乗っていた俺の鼻は折れ、深い音楽の森の入り口に立つことになったんだ。