映画「風立ちぬ」 | 出口汪ブログ「一日生きることは、一日進歩することでありたい。」by Ameba

映画「風立ちぬ」



映画「風立ちぬ」を見てきました。
背景となる絵のすばらしさ、ノスタルジアを感じさせる昭和初期の再現と、これだけでも十分見る価値があります。

ただ賛否両論のある映画だなと実感しました。
(僕は好きですが)

主人公は空に憧れ、純粋に飛行機の夢を追いかける青年。
その純情さ、情熱に心を打たれるのですが、ふと我に返ると、
主人公は零戦の開発者で、もちろん零戦は第二次世界大戦の象徴的な飛行機。
安い予算で優秀な戦闘機にするために、いかにに軽い機体にするかが勝負でした。
そのために軍部がとった方針は、パイロットの背後にある鉄鋼を取り払うこと。
つまり、人の命よりも戦闘に有利な方を選択したのです。
アメリカのB29はパイロットを守るために、その背後に頑丈な鉄板が取り付けてあります。
零戦はそれを取り除いたために、敵機からパイロットが狙い撃ちをされました。
おそらく宮崎駿もこうした事実を知っていたと思います。
そして、零戦はアメリカ軍により壊滅状態に追い込まれます。

そうした生々しい現実を巧みに回避しようとしたのか、物語は夢で始まり、結末も唐突で、夢落ちとなっています。
しかも、これも唐突に、最後のシーンで、散乱した零戦の廃墟を映し出します。
宮崎駿は反戦の監督ですから、彼なりに苦悩したのかなあ。

一方、物語は結核に冒された薄幸の美少女との恋愛がもう一つの旋律を奏でるのですが、このモチーフとなったのが堀辰雄の名作「風立ちぬ」。
ヒロインの名前が菜穂子ですが、この名まえは堀辰雄の代表作である「菜穂子」という小説の題名から取ったものでしょう。
宮崎駿はきっと堀辰雄のファンに違いありません。(僕も堀辰雄のファンですが)
こうした本来全く異なる二つの要素が重なり合うようにして、物語が展開します。
このあたりも賛否が分かれるところ。
でも、やっぱり僕はこの映画が好きです。
是非ご自分の目でご覧になって、賛否どちらか判断して下さい。

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