告白2
3月11日、午後飛行機は香港空港に到着しました。
入国審査の際、僕の番で、職員が英語と中国語で何かを懸命にしゃべっていました。僕は英語も中国語も苦手で、何を言っているのかよく分かりません。
いつもなら形式的な審査ですぐに通過できるのに、何か問題でもあったのかと思っていると、職員は突然紙を持ち出し、僕に「東北 大地震」と書いてくれました。
僕が日本人なので、親切に教えてくれたのでしょう。
僕は狐につままれたような気がして、そのまま紙をポケットに入れ、サンキューといって通過しました。
「東北 大地震」とあるので、何か東北地方で大きな地震があったんだなと思ったけれど、詳細はつかめません。せいぜい震度6ぐらいかと思い、ホテルについてテレビのニュースチャンネルをあわててみると、どうやらよほど大きな地震であることが分かりました。
ホテルでパソコンを立ち上げたけれど、ネットがつながりません。携帯電話もダメです。フロントに行ったけど、日本語が分かる人がいなくて、らちがあきません。
僕は機械音痴なので、どうしていいのか分からず、仕方がなくテレビをつけっぱなしにしていました。
その日はまだ正確な情報はあまり入っていないらしく、もどかしい気持ちでいっぱいでした。
翌日から次々と入ってくるテレビ画面に目が釘付けです。本当に信じられませんでした。
香港には四泊五日、日本のことが気になって仕方がなかったけれど、どうにもなりません。ニュースでは東北地方のことばかりで、東京も大きく揺れたことはまったく知らなかったのです。
そして、原発事故。
その頃は、まだ海外のニュースでは大きく取り上げられてなく、どうやら福島原発から黒煙が出ているけれども、政府の発表では安全だといった程度でした。
そして、日本に帰ってきました。
しばらくは浦島太郎状態。
香港にいたときはネットによる情報がまったく入らなかったので、帰国後に次第に入ってくる情報に戸惑いました。
テレビ画面に映し出されるあまりにも悲惨な情景に、一体自分は何ができるだろうと思いました。
そして、わたしの中で何かが確実に変わったのです。
その時は何が変わったのかよく理解できなかったのですが、今までのわたしの考え、生き方が揺らぐのを感じたのです。