小説「水月」 | 出口汪ブログ「一日生きることは、一日進歩することでありたい。」by Ameba

小説「水月」

実は、僕が自著の中で一番読んでほしいのが、

昨年講談社から出版された小説「水月」なんです。

構想三十年、この小説を完成することが夢でした。

基本的には幻想的な恋愛小説ですが、

とにかく不思議で、切ない、しかも誰も書いたことがない

小説を書きたかった。

愛と性、神と悪魔、生と死、そして狂気と、幻想的な世界に

どっぷりはまることでしょう。

実際、編集長が「先が全く読めない、こんな小説は初めてだ」と

言ってくださいました。

ところが、文学作品ということで、あまり書店においてもらえず、

今では大型書店か尼算などのネット書店でしか

手に入りません。

よかったら、ぜひ読んでみてください。

今、「水月」の続編を執筆中ですが、これも不思議な小説になりそうです。




ちなみに、アマゾンのブックレビューを紹介します。


カスタマーレビュー
水月

A
受験勉強で現代文を勉強していた際、愛用していた参考書の著者の作品ということで、ちょっと気になって購入しました。

最初はただそれだけの理由で買ったのですが、読んでみると一風変わった世界観にグイグイ引きこまれました。もともと小説家志望だったそうで、言葉が非常に美しいと思います。日常が突如非日常に変わったり、また突然戻ったりと、展開が非常にテンポよく進むため中だるみもなく一気に読めます。水月との儚い恋が、とても切ないです。

少しでも気になったら、是非読んでみて下さい。不思議な世界ですが、とても魅力的だな、と思いました。


B 

 出版社がどこも数値第一主義にあえいでいるこのご時世に、まことに贅沢な本格小説が刊行された。文学に乾いている者にとって、まだまだ捨てたものじゃない。
「想念」によって環境世界が変容していくという徹底した観念的小説である。現実感の希薄な世界、存在自体あやふやな登場人物が、少しずつその性格を明らかにしていく。「女」や環境など、自分以外がこの世のものでないという構成には慣れ親しんでいたと思う。でもここでは語り手自体の存在すら確かとは言い切れない。そこらは読んでみてのお楽しみで、文学という虚構の宇宙に遊ぶ者への楽しい仕掛けがまだまだたくさん用意されていると思う。
これはまさに壮大な物語の序章なのだ。すぐに「つかみ」から始まって「落ち」へ導くことが必須条件になっている商業主義作品のような性急な読み方は禁物だろう。これから物語世界のトビラがどのように開くか、それがとても期待される。


C 

 「論理」で著名な作者だから、きっと理詰めの固い小説かな、という先入観で読み出した。ところが、現実と夢、現界と霊界、生と死、その狭間の中有の世界で揺れ動く現実・人物、それらの絡まった糸を解きほぐそうと奔走する主人公、そう、これは魂の探偵小説だ。読者は、最後の最後まで、主人と共に、翻弄されつくす。そして最後に待っていたのは、意外な、そして感動のラストシーンだ。私は、このラストシーンに、安部公房の「燃えつきた地図」以来の衝撃を受けた。あなたも、この衝撃を味わってみたいと思いませんか?


D 

 メタフォリカルなタイトル「水月」。
この本を手に取った瞬間から勝負は始まっている。
生と死、あるいは揺れ動く心象表現がテーマなのか?と手がかりを得て読み進めてみた。

あらゆるレトリックと仕掛けが網の目のように巧みに張り巡らされ、時空を超越するかのような不思議なストーリー。
手元をめくるごとに、ぐいぐい引きつけられる。
時代性を定義づけるものがないのは、普遍性のロジックか。

ここにストーリーを書くのは反則行為だが、そもそも埋め込まれた仕掛けをつまびらかにする自信はない。
きっと作者は、そんな読者を少々意地悪く想像しながら、密かに楽しんでいるのではないだろうか?